004 ページ12
「ごめんなさい。せっかく作ってくれたのに、壊れちゃったの」
エマは申し訳なさそうにボロボロになったブレスレットに触れた。
悲しそうな表情で落ち込むエマに、大丈夫だと首を2回横に振った。
「じゃあ、今度会う時までになおしておきます」
そんなことを言われると思っていなかったエマは、困惑の表情を浮かべる。
自分はすぐにでも殺されてしまうのかもしれない状況だからだ。
もう会えないかもしれないというエマの気持ちとは反対に、彼女はどこか確信があるような笑顔をしていた。
「皆さんをデルカダール王国へ連れていかれるのですね」
カシャカシャ音を立てながらこちらへとやってくるグレイグ達へ身体をくるりと向ける。
彼女の一言にグレイグは鳩が豆鉄砲を食ったような驚いた様子で歩みを止めた。
「地獄耳なところも変わらぬな」
嫌味ったらしくホメロスがせせら笑う。
「失礼だぞ」とグレイグが注意するも全く聞く耳をもっていないようだ。
ホメロスの馬鹿にしたような物言いなどまったく気にしていない様子のAは、ありがとうございますとニッコリ微笑んだ。こてんと首を垂れるしぐさは、少し幼い顔立ちをした容姿も相まって愛らしい。
彼女の態度が気に入らなかったのかさらに機嫌を悪くしたホメロスの眉間には、先程よりも皴ができていた。
「Aちゃん…」
ぎゅっとAの手を握りしめたエマは、不安そうに事の成り行きを見守っていた。
「村人たちの命までとるようなことはしない。けして無下な行いはしないと約束しよう」
「最悪、交渉ができなければ戦闘ということも考えていたのですが、グレイグさまが来てくださって助かりました！」
ね、シロエさん！と微笑んだAに、ハハ…と苦笑いして眼鏡をカチャカチャいじっている。
「2人だけで我々と対峙するつもりだったのか？」
「そうですね、もしグレイグさまも加わっていた場合、シロエさんと私だけではかなり厳しかったでしょうけど」
グレイグさまが来られた時点で戦闘になる確率は低かったのでと付け加えたAに、グレイグはまるですべて見透かされているようだと複雑な表情を浮かべた。
シロエもひきつり笑いをしているが、この二人は最初から村人達を助けることを考えていたのだ。
戦闘の点においてAの実力は定かではないが、シロエはこの小隊を壊滅させてもおかしくはないとグレイグは思う。
「おい、そろそろいくぞ」
ホメロスの一声でグレイグは「あぁ」と短く返事をした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マナ | 作成日時：2020年1月12日 20時
