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「でも、だったらなんでAちゃんが次の飯綱使いになったの？お母さんは望んでいなかった事なんでしょ？」
「何を見たかしらないが、アイツは知っていたよ。薊が消えることも、その理由も。だから、願ったんだ。薊が消えることは母親は望むはずないからと。そして、次の使い手を飯綱が決めた。」
「それは、アイツの母親を裏切る結果になったんじゃないか？」
鶴丸は視線を合わせることなく、何か考えている様子で呟くように溢した。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。言っただろう。Aの母親と薊は他の飯綱使いからしても異質だったと。そしてAは母親にそっくりだ。Aからしたら薊は母親を知る数少ない母の友人で、薊からしたらその母親の忘れ形見のような存在だったのかもしれない。Aと薊が交わしたのは盟約ではなく、だたの約束だったのかもしれない。俺は、そう思ったから、自分の力を対価として、薊に力を提供する代わりにこうして使役できているというわけだ。」
「納得したわけではないが、大体わかった」
未だに不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、鶴丸は鼻を鳴らす。
「ごめんね。鶴さん、こんな感じだけど、本当は優しい人なんだよ」
「フッ、ああ。わかっている。Aを心配してくれているのだろう？、俺もそこまで馬鹿じゃないさ。」
申し訳なさそうに燭台切が苦笑いを浮かべると、碧はフッと目を細めて笑った。
「だが、Aの事を好いているのなら、一言くらい声をかけてやることだな。その様子では、Aとはまだ会話すらしたことないのだろう？」
図星をつかれてか、鶴丸はさらに眉間に皺を寄せる。
彼の様子に、碧は満足そうな笑みを浮かべ、燭台切と三日月はやれやれといった表情で互いの顔を見合わせた。
「アイツは昔から大人に対して気を遣っている分、物分かりが良すぎるところがある。だから、君が話せないのではなく、敢えて話してこない事も察しているだろう。」
「ああ、そうだな。だが、本人は少しもそんな事、気にも留めていない。むしろ、それでも良いと思っている。」
「そうか。そこまで分かってるなら安心した。」
「理由、聞かないんだな。」
「俺は、Aの事を少しでもわかってくれているのであればそれでいい。」
碧は静かに瞳を伏せた。
(聞いたところで、俺には君を縛る何かが何なのかわからない。だが、Aが俺にそうしてくれたように、君を縛る何かから、いつか解放されることを願っているよ。)
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
