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「言わなくてもわかるかもしれないけれど、そこらの力を持った人よりも、私はその力が強いみたい。色々苦労もしたわ。でも、こんな私でもAは私を”普通”としてくれたの。だから、私はこの力をAのために使おうって決めたの。もちろん、むやみやたらに使ったりはしなかったわよ。私のせいで、あの子が危険な目にあった時に、守れるように、あの子の持ち物にこっそりと力を込めてたってだけ。だからじゃないかしら、私の力の気配がするのは」
朱里はそこまで話すと、また大きな溜息を溢した。
「けど、結局迷惑かけてるのは私のほうね。私のお節介で結果的には私ではなくAがここに来た。もしかしたら、私は自分のせいであの子が危険な目に合うのが怖かっただけなのかも。その責任に押しつぶされるのが怖いだけだったのかもしれないわね。あの子ばかり苦労して、私って本当に友達失格ね…」
朱里の呆れたように笑みを溢す姿は、まるで自分を責めるようだった。
「あいつは、そんなこと思ってないだろう」
皆が驚いた表情で、その声の主へと顔を向けた。
今まで一言も喋ることのなかった鶴丸の言葉に、朱里は大きく瞳を見開く。
「…目の前にあるものを大切にできる。それはきっと、あんたもそこにいる…と俺は思う。」
「人は無意識に不満を漏らしては、そこにあるもの以上のものを求めようと欲を出す。ないものねだりというやつだな。」
「そうだね。Aちゃんは今あるものに感謝できる子だから。」
鶴丸に同意するように、三日月と燭台切は顔を見合わせて微笑む。
そんな彼らに、朱里と碧は互いの顔を見合わせた後、吹っ切れたような笑いを溢した。
「お待たせしました！…あれ、どうかされましたか？」
急須を持ったまま不思議そうに首を傾げ、Aは朱里の近くで腰を下ろした。
「朱里ちゃん、何か良いことありました？」
Aがニッコリと微笑んで、朱里に向かって尋ねる。
「ん？、ふふっ、内緒。」
意地悪そうな笑みを浮かべる朱里に、Aは嬉しそうに目を細めた。
「そういえば、朱里ちゃんと碧さんは、ここにどうやって来られたのですか？」
Aは自分がここにやってきた時の事を思い出しながら、天井を見上げる。
朱里から無言のままの視線を向けられ、碧はわざとらしく咳払いをした。
「まあ、Aに隠す事でもないしな。」
碧は立ち上がると、陽の光が差し込む縁側の方へと歩みを進める。
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
