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こんのすけは、もじもじと尻尾をテーブルの上に擦り付け、赤くなった顔を隠すように俯いていると、ハッとした表情でAと朱里を交互に見た。
「もしや、わたくしが間違えてしまったのは…」
何度かAと自分を交互に見合わせ、狐がそう呟いた瞬間、朱里は無表情のまま目を細めた。
「…あの、どうかされたのですか？」
Aは不思議そうに首を傾げる。
「あ、あの、A様、つかぬ事をお聞きするのですが…」
「A、お茶、おかわり」
こんのすけがAに言いかけた言葉を遮るように、朱里は湯呑をAへと向ける。
「え、あっ、はいはい」
キョトンとした顔のAが空っぽの湯吞を凝視する。
彼女は２，３回瞬きをした後、ニッコリと笑って急須を手にした。
「あ、なくなってしまったみたいなので、淹れてきますね。」
一滴の雫が湯呑の中に落ちる。
空っぽになってしまった急須を持ち、Aは立ち上がると、台所の方へと向かって部屋を出て行った。
「…何故、わざとAを部屋から遠のかせたのだ？聞かれたくない事でもあったか？」
Aが見えなくなったのを確認した三日月は、視線を朱里の方へと向けた。
「…別に」
「まあ、会ったばかりの俺たちに、そこまで話す義理はお主にはない。だが、俺はずっと不思議に思っていたのだ。Aがここへ来たのは、こんのすけがAに力があると思ったからだ。しかし、彼女にはそういった類の気配はあるものの、それは彼女自身のものではないとわかった。Aからは何も感じない。平凡な普通の娘だ。言葉を交わし、ひと時だが過ごしてよくわかった。」
朱里は、三日月に視線を合わせることなく聞いていた。
彼女はやがて諦めたように視線を三日月に向け、大きな溜息を吐いた。
「てことは、私と会って分かったんじゃない？」
朱里は物悲しいげに微笑んだ。
三日月はただ静かにニッコリと笑ってみせる。
「そうよ。あの子には特別なものは何もないわ。あるのは、私。そっか、やっぱり。」
朱里は納得したという表情で肩を落とした。
「でも、Aちゃんには特別な力があるわけじゃないのに、なんで君の力が纏わりつくように漂ってるんだろう…あ、ごめん」
呟くように漏れ出た疑問に、燭台切はハッと口を押えて項垂れた。
「別に気にしてないわ。疑問に思うのは当然だもの。」
さっきまでの朱里の態度とは変わって、彼女はまた物悲しそうに口元を緩めた。
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
