【刀剣乱舞】君を、想う【ブラック本丸】 (ページ42)

今日:57 hit、昨日:3 hit、合計:39,263 hit

006 ページ42

◇

テーブルの食器をとりあえず台所に移動した後、彼らは向かい合う様に座った。

「はい、どうぞ」

気まずい空気の中、Aはそれぞれが座っているテーブルの上に、お茶の入った湯呑を置いていく。

「ごめんね。食器片付けるの手伝ってもらった上に、お茶入れるの頼んじゃって」

「いいえ、気にしないでください」

気にした様子ものなくニッコリと微笑んだAに、燭台切も微笑んだ時だった。
刺さるような視線に、燭台切は向かい側に視線だけを向ける。

(…す、すっごく睨まれてる気がする)

先程よりは落ち着いた様子だが、何やら怒っているような、不満そうな空気を身体全体から出している朱里が、ジッとこちらを凝視していた。
燭台切は彼女の視線から逃れるように、Aの置いたお茶の入った湯呑に視線を下げる。

「では、どこから話そうか…」

Aが朱里達の方に座ったのを確認した三日月は、飲んでいた湯吞をテーブルの上に置いた。

「あ、では、自己紹介をしましょう！名前がわからないというのは不便ですし」

Aは思いついたように両手をポンと合わせて、パッと咲いたように微笑む。

「それもそうだな。では、Aに任せてよいか？」

「はい！お任せください！では、朱里ちゃんから紹介しますね！」

Aは自身の隣に座っている朱里に顔を向けて、ニッコリと微笑んだ。

「いいわよ。自分でできるから。名前は芽蕗朱里。Aとは従姉妹関係っていえばわかるかしら。まあ、小さい頃から一緒に住んでいるから、家族も同然という感じだけれど。」

(…あっ、この子がAちゃんの言ってた、一緒に住んでるっていう子か。)

燭台切は以前、Aが台所で話していた従姉妹の話を思い出す。
あの時はほんの一瞬のお話で、あまり気にも留めていなかったけれど、Aの優しい瞳だけは覚えている。
彼女にとって、とても大事な人。少し羨ましいと感じた時だった。

(そっか、この子が…)

「…なに？」

「えっ、いや…」

キッと朱里に睨みつけられて、燭台切は目を逸らす。
いつの間にか彼女をじっと見つめてしまっていたのだろう。朱里は不満そうに眉を顰めた。

「朱里、Aが世話になったのは事実だ。もう少し愛想よくしたらどうだ。」

「碧(みどり)に言われたくない」

碧が彼女を窘めようとすれば、朱里は鼻を鳴らして悪態をついた。
「まあまあ」とAは落ち着かせるように、そんな二人の間に入って、少し困った様子で微笑んでいる。