【刀剣乱舞】君を、想う【ブラック本丸】 (ページ5)

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誰かが反応してくれるのではないかと期待するも、応えてくれる気配はなかった。
困り果てているAの視界に、白が横切る。
先程までAの隣にいた彼は、羽織の袖に両手を隠し、屋敷の中へと入っていく。

「ええっ！だっ、ダメですっ、勝手に入ったら怒られますよ！」

彼女の静止も聞かず白い彼は、どんどん屋敷の中へと進んでいく。
Aは少し悩んだ末、「お、お邪魔しますっ」と言い、慌てて彼の後を追った。

想像よりも遥かに広い屋敷を二人は歩く。
あまりにも静か過ぎて、ここには誰も住んでいないのではないかと思ってしまうくらいだ。
外見はとても綺麗に見えるのだが、中はとてもではないが綺麗とは程遠い。
あまり手入れが行き届いていないのだろう。建てられた頃は風情ある庭だったであろう場所も雑草が伸びていた。

「わっ…！」

軽く何かにぶつかるも、それは自分の前を歩いていた彼だと察する。
反射的に謝ろうとするAは、振り返ることのない目の前の彼に首を傾げた。
彼が睨むように見つめる先を、彼女も目を凝らす。

「た、大変です！人が…！」

彼女は慌てて駆け寄ろうと走り出す。
Aは地面に膝をつくと、俯せになって倒れている黒いジャージ姿の男性に声を掛ける。

「あのっ、大丈夫ですか！？」

「…ぅ…」

苦しそうに呻く声が聞こえ、意識はまだあることに安堵した。
周囲にどこか寝かせられる場所はないかとAが辺りを見回していると、突然背後からガコンッという音がする。
何事かと振り返ってみれば、白い彼が木の扉を無理やりこじ開けていた。
この中で休ませようという事だとだろう。
Aはぐったりとしてるジャージ姿の青年の腕を自分の肩に回す。
木の扉をこじ開けていた彼も、彼女を見て、だらりと垂れた左腕を掴むと、自分の肩へと回し担いだ。
二人は顔を見合わせてから、同時に立ち上がると、小屋の中へと運んだ。

「ここは…台所、でしょうか？」

昔ながらを感じさせる薪で炊く竈のほかに、見慣れた冷蔵庫や綺麗に整えられたステンレス製のシンク、年季の入った棚の中には、色んな種類の食器が並べられていた。
広い台所とは別に、フローリング上に6畳ほどの座敷が設けられている場所に、青年を寝かせる。
苦しそうに時々呻き声を漏らす青年の額に、Aはそっと手を当てると、自分の体温よりも籠った熱を感じた。

(すごく苦しそうです、なにかできること…)

少しの間考えた彼女は勢いよく立ち上がった。