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「ち、違いますっ！私は、本当に果報者だなって思ったのです。そう言ってくれる人がいてくれるのは、想ってくれる人がいるのは、とても幸せなことだって。嬉しい、嬉しいです。」
首を横に振って、頬を伝う涙を両手で拭いながら、嬉しそうに微笑んんだAに、燭台切も目を細めて微笑み返す。
「もしも、この我儘が叶うなら、一緒にいたい。まだ、皆さんとお別れしたくないです。」
祈るように両手を胸にあて、Aは願う。
その姿に燭台切が愛しそうに瞳を細め、彼女の肩を手繰り寄せようと力を込めた瞬間、苛立った声が響き渡った。
「ああもうっ、だったら最初からそう言いなさいよ！！」
大きな声が聞こえた方へと、その場にいた皆が顔を向ける。
両手を腰に当て、眉間に皺を寄せて、不機嫌そうにこちらを睨む少女がいた。
「じゅ、朱里ちゃん…！」
その少女に向かって目を皿のようにして驚きの声を上げたのは、Aだった。
「朱里ちゃん、ど、どうして、ここに！？」
また泣きそうな声で少女の名前を呼ぶAに、朱里は無言でズカズカと歩き始めると、Aの前でピタリと止まった。
「じゅ、朱里…ちゃん？」
目の前で俯き、表情が見えない朱里を心配したように、Aは伺う様に首を傾げる。
「ふ…」
「ふ…？」
「ふざけんじゃないわよ連絡しても繋がらないしっ、どれだけ探すのに苦労したと思ってるのよ！！あんたがいなくなって何時間経ったと思ってんの！？4時間よっ、よっ、じっ、かっ、んっ！！こっちはあんたの気配がなくなって心配で
「いっひゃ、ゆふぃひゃっ、すふぃまふぇっ」
勢いよく顔を上げた朱里は、Aの顔をこれでもかと引っ張たり、押しつぶしたように皺くちゃに揉んだりと両手で彼女を思いっきり鷲掴んだ。
「え、ええ、あ、あの…、そんなに顔をもみくちゃにしたらAちゃんがかわいそ…」
その様子に見ていられなくなったのか、燭台切は二人の間に止めに入ろうと手を伸ばすが、すぐに鶴丸が制止した。
「つ、鶴さん…？」
鶴丸の行動に理解ができない燭台切は、首を傾げた。
鶴丸はなにを言うわけでもなく、顎でよく見ろとしゃくり上げる。
「…あ」
燭台切が再度二人を見て、小さく声を漏らす。
もみくちゃにされながらも、Aの表情はとても嬉しそうに、幸せそうに笑っていたからだ。
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
