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先程よりも明るく、晴れやかな笑顔を浮かべた燭台切が振り返る。
「嬉しかったよ、久しぶりに名前を呼んでもらえて。あと、心配してくれてたんだよね。僕の事もAちゃんの事も」
嬉しそうに顔を覗き込んでくる燭台切に、鶴丸は睨むように目を細めて小さく鼻を鳴らした。
「鶴さん、素直じゃないね」
「いいから、さっさと行くぞ」
◇
「燭台切さん…」
「…えっと」
燭台切とAはしばらく顔を見合わせた後、俯き加減に顔をそらした。
二人の様子を無言で見ていた三日月は、燭台切の後ろの方で壁に寄りかかる鶴丸に視線をやると、鶴丸は三日月の視線に気づいてか、肩をすくめてみせた。
意を決したように燭台切は顔を上げる。
「さっきは酷い事言って本当にごめんっ、平気だなんて筈ないのに。それが悲しいって事、Aちゃんが一番知ってるのに、傷つけてごめん。謝って許されるなんて思ってないけど、でもこのままは嫌だから。」
悲しげに微笑んだ燭台切に、ハッとした表情でAは顔を上げて、首を横に振った。
「ち、違います。誤らなければいけないのは、私なのです…。嬉しかったです。燭台切さんが怒ったのは、私のことを少なくとも好いてくれているから。仲良くしたいと思ってくれているから。」
「うん」
「忘れていいなんて、そんな事ないです。寂しいです。忘れてしまうのは。でも、皆さんを不安にさせたくはないです。困らせたくないです。だから、我慢しなくてはいけないのです。」
「うん」
「なのに、こんなにも寂しいなんて思ってしまうのは、勝手です。我儘です。それなのに、離れたくないなんてっ。皆さんのこともっと知っていきたいですっ、ここにいたいっ、一緒にいたいです…っ」
願い、叫ぶように、温かな雫がとめどなく溢れてくる。
嗚咽交じりに紡がれていく彼女の願いを、三日月と鶴丸もただ静かに聞いていた。
Aの震える肩に燭台切はそっと両手を置くと、彼女の目線まで屈む。
「いいよ。我儘言ったって、いいんだ。甘えてよ。それを鬱陶しいなんて思わないし、嫌いになったりもしない。」
『我儘言ったっていいだろ。おまえは色々と我慢しすぎなんだよ。少しくらい我儘言ったって、別に鬱陶しいなんて思わねぇし、嫌いになったりしねぇよ』
優しく微笑んだ燭台切に、Aは思い出したようにハッとした顔をした後、雨粒のような涙を溢しはじめた。
「えっ、ご、ごめんね！僕また傷つけちゃうこと言ったかなっ！？」
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
