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山姥切達がいなくなった場所を見つめて、ぼんやりと立っていた燭台切に、Aは不思議そうに首を傾げたが、燭台切は何事もなかったかのように笑って振り返ると、テーブルの前へと移動した。
「そういえばその服、やっぱり大きかったかな…？」
肩幅の合っていない白のワイシャツは、Aの腰を隠す程長く、赤のラインが入った黒のズボンとワイシャツの袖は、折り曲げていても彼女には大きすぎるのか、少し不格好になっていた。
「いいえ、こんなに良くして頂いて、むしろ感謝しなくてはいけません。この服はどなたのものなのでしょうか。きちんと洗って、お礼を言いたいのですが…」
「そのズボンは僕のだよ。ワイシャツは山姥切君ていう子のだね。最初に来たときの広間にも食事にもいなかったから分からないと思うけど、いつも頭から白い布を被ってる子なんだ。」
「もしかし、お食事をずっと摂られていないのですか？」
「彼の分はいつも後から持っていってるんだ。だから、心配しないで。でも、直接会うのは難しいと思うから、僕から返しに行く時に伝えておくよ」
「良かったぁ…、お食事は摂られているのですね。直接お礼を言えないのは残念ですが、仕方ないです。では、お言葉に甘えてお願い致します。」
Aはホッと胸を撫で下ろした後、残念そうに眉を下げて、頭を下げた。
「気にしないで。じゃあ、始めようか！鶴丸さんも手伝ってね！」
まさか自分も手伝わされると思っていなかった鶴丸は、あからさまに嫌そうに眉を顰めた。
「皆で作った方が早く終わるし、楽しいでしょ？」
「はい！鶴丸さんもご一緒に作りましょう！」
燭台切がAに同意を求めれば、彼女はニコニコと微笑んで鶴丸を見た。
どうしたものかと頭を掻いて悩んだ鶴丸は、渋々といった様子で息をひとつ吐くと、観念したのか肩を竦めて、中指と薬指以外が指貫になっている黒手袋を脱ぎ始めた。
(鶴丸さんもAちゃんには敵わないね…)
心の中で燭台切は苦笑いをする。
鶴丸にとってAのように、自分の気持ちや感情を素直に表に出すタイプは正直どうしていいか分からないのだろう。
(そういえば、鶴丸さんはなんでAちゃんの側にいるんだろう。彼女を守るように、昨日審神者さんに言われてはいたけれど、それよりも前から鶴丸さんは、彼女を守るようにしていた気がする。寧ろそれは、執着のようにも感じるけれど…)
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
