【刀剣乱舞】君を、想う【ブラック本丸】 (ページ24)

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自分に触れようとした手は、触れる事なく空をきって、突然Aの身体が自分の方へと倒れそうになるのを既の所で受け止める。

「あなや」

湯船に沈むことは避けられたが、息苦しそうに上下に動く肩から、篭った熱が伝わってきた。
不規則な呼吸と体温に、のぼせてしまったのだと思う。
彼女を運ぶ為に、身体を抱き寄せようとした時、脱衣所の方からドダドタと荒々しい音が近づいてくる。
音が止まったと同時に、勢いよく風呂場の扉がガラガラッと音を立てて開いた。
血相を変えて飛び込んできたのは、いつもは無表情の鶴丸だった。
その後ろからもう一つの足音が聞こえ、現れたのは燭台切だった。

「Aちゃん！！悲鳴が聞こえてきたけど、どうし、うわああああああ！？どういう状況っていうか、三日月さんなんでここにっ！？鶴丸さんっ、抜刀してないで！？落ち着いてっ！？」

「燭台切。まずは、お主が落ち着いたほうがいいと思うぞ」

心底軽蔑した瞳で三日月を見下ろしていた鶴丸は、今にも抜刀しそうであるため、燭台切は慌てて止めに入る。

「なにか誤解をしているようだが、俺はこの娘と話していただけで、お主が考えているようなことはないぞ」

愉快そうに笑った三日月に、鶴丸は自身の刀を抜こうとする。

「鶴丸さん落ち着いて！！三日月さん、入り口に貼り紙してあったんだけど見なかったの！？」

「はて？そういえば、そんなものがあったような…。まあ、そんなことより、手伝ってくれぬか。のぼせてしまったようでな、このままでは可哀想だろう」

三日月は目を伏せると、Aを見つめて張り付いて濡れた前髪を優しく流した。

「…あぁ、そ、そうだね！鶴丸さん、脱衣所からタオル取ってきて！」

燭台切に言われ、鶴丸は渋々といった様子で刀をしまうと、燭台切が脱衣所に落としたタオルを取りに踵を返した。

◇

「…ぅ…ん…」

重たい瞼を開けてみれば、視界に映るのは薄明るい藍色に彩られた天井だった。
ふと、頬にあたる風を感じ、顔を向けてみると、ぼやける視界に数回瞬きをした。

「しょく‥だい、ぎりさん…？」

ゆっくりとうちわを扇いでいた手をピタリと止め、燭台切は安心したように口元を緩めた。

「よかった。気分どう？」

「…はい、大丈夫です。すみせん、私、またご迷惑をおかけしてしまったのですね…」

申し訳なさそうに、Aが力なく笑っていると、燭台切の後ろの障子がガラッっと音を立てて開いた。