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「じゃあ、先にお風呂に入ってて。この時間はみんなお風呂に入り終わって、誰も使わないから。一応使用中の札の横に、張り紙はしておいたからね。僕は、着れるものを探してくるから、見つけたらタオルと一緒に籠の隣に置いておくね」
「すみません、燭台切さんもお疲れなのに、お任せしてしまって…」
「気にしないで。じゃあ、ごゆっくり」
ひらひらと手を振ってから、燭台切は脱衣所の扉を閉め、柱に掛かっている札を”使用中”へと返す。
「さてと…、鶴丸さん。もしかして、そこでずっといるつもり？」
脱衣所の壁に寄り掛かっている鶴丸に、燭台切は溜息をつく。
「あのね。確かにみんな、Aちゃんのことを歓迎しているわけじゃないけど、鶴丸さんが考えてるようなことはないと思うよ。それに、こんなところで待たせていたってAちゃんが知ったら、気を遣ってゆっくりお風呂に入るのを辞めちゃうと思うんだ。」
「…」
「とりあえず、Aちゃんの服を探しに行こうよ」
鶴丸はしばらく壁に寄りかかったまま、考えるように天井を見上げていたが、納得したのか燭台切へと向き直った。
それでも渋々といった様子の鶴丸に、燭台切は肩をすくめて笑うと、鶴丸とその場を後にした。
「わぁ…！ホントに広いです！」
石造りのタイルの先には、異なるサイズの岩が並べられており、そこから霧のように湯気が立ち込めている。
手をさらりとした湯に浸してみると、心地の良い湯加減だった。
「とっても気持ちいいですー…でも、広すぎて一人だと少し寂しいかもしれませんね…」
湯に浸かりながら周りを見渡してみると、木材の壁で囲われていた。
ここに来た時に見た庭の荒れ果てた状態とは違って、幾分か綺麗に清掃されている。
それでも、桶や椅子などは端の方に乱雑に置かれていた。
「
いつも一緒にいてくれる大好きな友達を思い出し、ブクブクとお湯に顔を埋める。
連絡ができればと携帯を試してみたが、圏外となってしまいどうにもならなかった。
「い、いけません！いけません！こんな私は駄目ですっ、もっとしっかりしなくては！」
ペチペチと両頬を叩き、両手を握りしめて、上を見上げる。
「おお、先客がいたか。隣、いいか？」
「あ、はい。どう…」
背後から声をかけられ、咄嗟にAは微笑みながら振り返った先に硬直してしまう。
「え？」
「ん？」
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
