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互いに無言の時が続く。それは薄暗く静かなこの空間では、彼女にとってかなりのプレッシャーだった。
「あ、あのっ…！」
勢いよく下げていた頭を上げ、彼女は瞬間静止した。
視界には見惚れてしまう程の青年の顔。彼の息が掛かりそうなほどの距離なのは、彼が少し屈んでくれているからだろう。
「えっ！？あっ！！すすす、すみっ、すみませんっ！！」
「……っ！」
「…わっ」
おろおろと両手をパタパタと上下に激しく降っていた混乱気味の彼女を、彼は力任せに引き寄せる。気づけば彼に抱きしめられている状態に、顔に熱が籠るのを感じた。
慌てて離れようとするも、彼は片腕により一層い力を込める。
一体どうしたのだろうとAが見上げれば、先程まで無表情であった彼が一点を睨んでいた。ふと、凛とした声が響く。
「ほお。驚いたな。」
月夜の青みがかった夜を連想させるような色のゆったりとした着物に身を包み、腹には重量感のある甲冑を巻いている綺麗な青年がゆっくりとこちらに歩み寄る。
大人びて見える青年はゆったりとした口調で呟くと、にっこりと笑った。
「ふむ…」
その青年は、何かを見定めるように顎に手をあて、少しの間考える。
未だ睨めつけている純白の彼をよく見れば、自信を抱えている手とは別に、鞘に収まったままの刀を構えていた。
それは相手も同じで、彼の手にはすでに棘のように鋭く光る刃が握られている。
どこか抜けている笑顔なのに、空気は胸を締め付けるように重い。
息苦しくなった掠れた声がAから漏れると同時に、白い彼は彼女の腕を掴んで走り出した瞬間。
「…っ！」
突然足元から円を描くように、幾重にも伸びる光の柱が、A達を包み込む。
青白い光が円と共にこちらに近づいてくると、二人は眩い閃光に飲み込まれ、一つの線となって消えた。
気付けばまた、知らない場所へと移動してしまっていたAは、ぼうっと周囲を見回した。
(ここは、どこなのでしょう…)
透き通った空はどこまでも続き、小高い丘の上にぽつんと大きな木が一本たっている。
立派な木ではあるが、蕾も葉もなく、どこか瘦せ細っているように見える枝が痛々しく感じた。
Aの視界に白くて細い手が差し出され、そっとその手を掴むと、純白の彼が身体を引き起こしてくれる。
「あの、ありがとうございます。はじめまして、わたし芽蕗Aといいます。」
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
