【刀剣乱舞】君を、想う【ブラック本丸】 (ページ18)

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「人が生まれて持っていくる良心は、少なからず本能に備わってはいるけれど、それはまだ種のままなんだそうです。色んな人と関わりながら、誰かを傷つけたり、傷つけられたりすることもあるけれど、そうして悩むことで、優しさは色んな形になっていくんだって。お父さんとお母さんは、私にそう教えてくれました。」

Aは懐かしそうな声で遠い思い出を話す。
少しの間をおいて、燭台切は嬉しそうに微笑む。

「ありがとう。改めて、これからよろしくね。僕もAちゃんと、もっと仲良くなっていきたいから」

燭台切の笑顔に、Aは頬を赤く染め、微笑み返した。
はじめて、彼が心から笑ったように感じたからだ。
それが嬉しくて、格好良くて、心臓がドキドキした。
もっと仲良くなっていけたら、素敵だと。Aは胸の奥でそう呟いた。

◇

「できましたー！！」

「Aちゃんのおかげで、随分と助かったよ。ありがとう。」

「お役に立てたのでしたら嬉しいです！こちらは広間へお運びすればよろしいですか？」

「料理は重いし、僕が持っていくよ。Aちゃんは食器を持っていってくれると嬉しいな」

「わかりました！」

綺麗に整頓された状態の食器が並ぶ棚を燭台切が指差す。
Aはビシッと頭の上に手を当てると、食器棚へと小走りに駆けていく。
棚の前で食器をいくつか重ねていると、影ができて見上げる。

「…鶴丸さん？」

彼は不思議そうに見上るAと一瞬だけ目を合わせると、彼女が重ねた茶碗を腕の中に抱える。

「もしかして、手伝ってくれるのですか…？」

相変わらず表情一つ変えることなく無言のままの鶴丸だが、Aの声にはきちんと反応するようだ。鶴丸はこちらをじっと見た後、厨房を出ていこうと歩き出した。
Aは鶴丸の背中を見つめて、ふと嬉しくなって笑みを溢すと、そのあとを小走りに追いかけていった。

鶴丸とAが食器を往復して揃えている間、燭台切は出来上がった料理を器へとよそっていく。

「燭台切さん、食器はこれで足りますか？」

「うん、ありがとう。何度も往復させてごめんね」

「いいえ！鶴丸さんが手伝ってくださったので平気です！鶴丸さん、ありがとうございました！」

Aは鶴丸にニッコリと微笑むと、無表情のままその場に胡坐をかいた。
鶴丸の態度を気にする様子もなく、「あ、テーブルに並べていきますね」と、綺麗に盛り付けられた皿を両手にテーブルへと運び始めた。