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ひとつ、ふたつ、みっつと鎖の輪が次々と砕けていく。
不思議なことに鎖の破片は、地面に落ちることなく光の粒となって消えていく。
すべての鎖が泡のように消えたと同時に、支えを失った刀が勢いよく地面へと落下する。
「あ、あぶないですっ！！」
落ちると思うより先に足はすでに走り出していた。
しかし、このままでは間に合わないと感じ、腕の関節が痛いくらい手を伸ばし、地面を勢いよく蹴り上げる。
地面に何度か身体がバウンドした。
少しの間地面に蹲っていた彼女は、恐る恐る自分の両腕を緩めた。
「よ、よかったです…。どこも傷ついてなくて」
自分の腕に収まる刀を見て、安堵の息を漏らす。
本当に良かった、そう思った時だった。
ひらりと淡く光る雪のような何かが、視界に映る。
それは、桜の花びらだった。
一枚の花弁が地面にそっと落ちたと同時に、暖かい風が勢いよく吹き荒れる。
腕の中にある刀がカタカタと音を立てて震えだし、彼女が視線を落とした瞬間、鞘の隙間から鋭角な刃が光った。自身の青みがかった黒の瞳が映る。
刹那、視界に溢れ出してきたのは、息ができないくらい大量の桜の花弁だった。
「…うっ…」
薄目を開けると視界いっぱいに淡く光る花弁が暖かい風に舞う。
次第に目の前に広がる桜色は風と共に消え去っていく。
瞼を開け、緩く息をする。
「…え？」
彼女の瞳が大きく見開かれる。
先ほどまで腕に抱えていたはずの刀はなく、人形のように整った顔立ちの光のこもった雪のように白い青年がいた。
彼は静かに白く伸びる睫毛を上げると蜜のような金色の瞳と目が合った。
「え、えっと…どちら、さまでしょう？」
彼は驚く様子もなく、音もなく立ち上がった。
Aは慌てて立ち上がると、純白の青年の手にふと視線が向く。
彼の細い手に握られていたのは、さっきまでAが抱えていたはずの刀がだった。
「そ、それ…もしかして貴方のでしたか！？す、すみません！私が触った途端、鎖が壊れてしまって」
彼女が膝まで頭を勢いよく下げる。
青年は一言も発することなく、彼女の姿をじっと見つめてた。
「あの…」
そのままの態勢で少しだけ頭を上げる。
なにも喋ろうとしない彼に、Aは不安な声色になった。
(やはり…怒っているのでしょうか。大切なものを勝手に持ち出してしまったのですから、当然ですよね。どうしたら許してもらえるでしょうか。)
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作者名：マナ | 作成日時：2021年8月2日 16時
