ある日の不調な小瀧さん

いじめ６ ページ17

side神山


連絡がつかないまま、観劇の日がやってきてしまった。



今日が東京千秋楽。この後数日空けて地方公演が始まる。



俺はメンバーの中で最後の観劇やった。



先に見たメンバーは皆、作品の凄まじさと同時に、顔を曇らせのんちゃんが心配や、て零す。



でも楽屋への挨拶もNGが出されてて、何も出来なかったらしい。



劇場が暗転し、舞台が始まる。



久しぶりののんちゃんは、痩せてやつれてるようにみえた。



重く、残酷なシナリオ。芝居のあまりのリアルさに圧倒される。



(……芝居…よな？いや当たり前やろ舞台なんやから…。)



板の上に駆け寄って守ってやりたい衝動に何度も襲われるほど、物語にのめり込む。



小「負けないっ…僕は、負けないっ…！」



自身を奮い立たせて立ち向かう主人公の手が恐怖に震えて、震えを抑えようと拳を握り込む。



手のひらに食いこんだ爪の跡が傷になっていくつもみえた瞬間、モヤモヤとしていたものが疑念に変わった。



芝居で傷になるほど力を込めるやろうか…？

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