音駒の熟年夫婦【黒尾鉄朗】

16話 ページ17

「お前、なんか荷物多くね？」

『気のせい気のせい。』




合宿当日、リュックいっぱいに参考書を詰めて来たからめちゃくちゃ重たい。


受験生だからね…隙間時間を有効活用しなきゃ。




「持ちましょうか？」


『いーよ、ありがとね。』




今日も朝早いっていうのに、寝ずに夜中まで机に向かってたもんだから少しだけ眠たい。


でも、そんなこと言ってられない。







梟谷学園に到着して挨拶した後、雪絵ちゃんとかおりちゃん、それから英里ちゃんと真子ちゃんと共に早速色々な準備に取り掛かる。





「一緒にやりますよ。」



そう声をかけてきたのは、梟谷の赤葦くんだった。

去年、合宿の時に喋る機会があって、そこから仲良くしてもらっている。





『いいよ、自分の高校の手伝いな？』


「それは一年生たちが行ったので大丈夫です。
音駒は人数少ないし、マネージャーもAさんだけで
他の高校より大変ですよね。」


『…………神なのかな？』




赤葦は喋り終わるより先に、私の手にあった重みのあるビブスの入った籠をさらりと代わりに持ってくれる。


うん、これはモテるな。





流石、木兎くんのお世話を日頃からしているだけあって周りがよく見えている。





「ねぇあかーしくん？
それ俺の仕事。」





そしてなんか来た。


振り返るまでもないけど、赤葦と共に背後を見ればニッコリと笑ってこちらを見る音駒の主将が佇んでいた。




なんでコイツここにいんの、暇なんか？




「あとさっき、木兎が赤葦のこと全力で探してたぞ。
早く行ってやった方がいいんじゃない？」


「あの人キャプテンだよな…」




なんて言いながら「お願いします」なんて言って黒尾に預けた赤葦はパタパタと駆けて行った。



大変だな…なんてその背中を見て苦笑いをしていると「行くぞ」なんて黒尾が歩き出す。




「赤葦も隅に置けねぇな。」


『赤葦が私をそういう目で見るわけないでしょ。』


「まあだよな。
それだったら流石に見る目ねぇと思う。」


『しばいていい？』


「嘘じゃん！ごめんって！！

Aサンは超可愛い〜っす。」


『ふん、わかればよろしい。』


「冗談じゃなく、マジで言ってるから、俺。」


『え、』


「お、烏野着いたっぽいな。
行こうぜ。」


『あ、うん……え？』




なに、今のナチュラルに爆弾発言




…なんだろ、気のせいじゃなかったら


黒尾…この前からちょっとだけ様子が変じゃない？







『…や、気のせいだ。』

17話→←15話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す