77話 ページ33
「さて、続いては"新人俳優賞"の発表です!」
マイクを片手に、司会者が滑舌の良い口調でそう話した瞬間、私は場内の袖で酷く緊張していた。
真っ黒で綺麗なドレスに身を包んで、いつもより綺麗にしてもらっても周りにある人達、そしてこの先で目にする大先輩達を想像しただけで震えが止まらない。
私がこんな舞台に立っていいのだろうか…。
ここまでの間に、沢山のことがあってその度に取り超えてきた。
どうにか今までの分を取り返そうと必死にもがいていると、周りの声は段々と応援の方が多くなっていった。
……うん、大丈夫。
「…ぅわっ!」
『ひゃぁ…ッ?!
な、ななな何するんですか…!』
「すんごい顔。」
声を出さずに、指を指して笑う目隠し野郎にヒールを履いたままの足で蹴ろうとすると、やっぱり今日も防がれる。
ほんと信じられん。
茶化しにきただけならやめてほしいと、前を向き直るとドレスに覆われていない腕に後ろから手が伸びてくる。
「大丈夫、何かあっても僕がいるから。」
耳元でそう囁いた彼を振り返れば、にっこり微笑まれる。
うん…なら、絶対に大丈夫だ。
拍手が鳴り響いてきて、私は一歩踏み出した。
わぁ…凄く華やかで、なんて明るい場所だ。
まさか私がこの場所に来るなんて思ってもいなかった。
夢だった。
目標だった。
何かの、誰かの光になれることが。
私はこの場所で今、一つのそれを達成したんだと思う。
届けたい、暗い場所で泣いている子がいたら手を伸ばしたい。
私、こんなにも輝けた。
マイクを持って考えてきたスピーチを述べて、近くに座るテレビ越しで見ていたような人達を眺めて、そして今日が終わる。
「Aさん、おめでとうございます。」
『ありがとうございます…!
中野さんもおめでとうございます。』
後ろからそう声をかけられて、同じ新人俳優賞を手にした彼に挨拶をすると爽やかに微笑み返された。
少しだけ他愛もない話をして、『お互い頑張りましょう。』と背を向けると「あの…!」と再び呼び止められた。
人も少なくなってきて、彼はキョロキョロと周りを伺ったあと、真っ直ぐに私を見つめる。
あ…これはもしや……
「こ、今度僕と……」
「はーいストップ♡」
私の肩を抱いて突如として現れた変態目隠し。
笑顔とは裏腹に、手にはしっかりと力が。
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きのこ姫(プロフ) - 禪院が禅院になってますよ〜 (3月8日 10時) (レス) @page6 id: 5521fd53c5 (このIDを非表示/違反報告)
園実(プロフ) - 言葉の使い方がおかしい所が多すぎて… (2022年2月14日 6時) (レス) @page18 id: 583543dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - ayastさん» ありがとうございます…!そう言っていただけて本当に本当に嬉しいです…(涙)この作品を見つけてくださり心より感謝しています^_^ (2022年2月12日 21時) (レス) id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
ayast(プロフ) - 連載お疲れ様でした!!お話大好きでした! (2022年2月9日 23時) (レス) @page35 id: af36fdec29 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - はなさん» わわわ…!本当ですね!教えていただきありがとうございます🙇🏻♀️ やっぱリップ、、じわじわきます…www (2022年2月5日 22時) (レス) @page25 id: 960672bf5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃっぱ195 | 作成日時:2022年1月20日 21時