76話 ページ32
そうだけど…そうなんだけどさ。
あの感覚、久しぶりだったんだよ。
自分の役割なんてもうなくて、唐突に無力さを突きつけられたようなあの感覚は。
もちろん任務が溜まっていて海外に来たっていうのは紛れもない事実だ。
でも、それと同じくらいの理由で、君という存在に近づけなくなった自分の気持ちの弱さも痛感した。
一度、君と離れてみることで何かわかるんじゃないかって思ったのに…なんで、この子は……。
『……私、まだ契約破棄してないですから。』
僕の胸に顔を埋めて、ぽつりと呟いた。
一体なんの話だ…?
その疑問を口にする前に、彼女はパッと顔を上げて僕の目の前まで迫る。
『私のセコムの話ですよ。』
「え……」
『あっれ〜?
もしかして、本当に自分が用無しだと思い込んで大事なお仕事をほったらかしにして海外に来たわけじゃあないですよねぇ…?』
凄く怖い笑顔を浮かべて僕を見つめてくる。
ご名答ですよ、お姉さん。
僕のため息を肯定とみなしたAは、一度僕から離れてそしてこちらを振り向く。
長い髪の毛が風に靡いて、Aの美しさをより引き立てている。
その姿から目を離せないでいると、Aの口がゆっくりと動いた。
『あーあ…また言い寄られちゃったらどうしよー。
私、自分じゃ断れないひ弱な女だから誰か守ってくれないと怖いなー。(棒)』
「……ほんと、君には敵わないよ。」
『あなたも大分、私に甘いですけどね。』
「そりゃ、Aだもん。」
馬鹿馬鹿しい。
なんでちょっと弱気になってたんだ。
それもあっさりと彼女にバレてるし。
「2人で帰国しよっか。
…て、まあ僕はまだあと1週間はこっちにいなきゃなんだけどさ。」
『ふっふっふっ…これを見てください。』
「え…ホテルのカードキー……
いやいや、まさかね!」
『さ、行きましょうねー。
1週間分の休憩なんて滅多に許されませんから。
今のうちに海外満喫するんですから、付き合ってくださいよ〜。』
伊地知…あの野郎、漏らしやがったな。
まあ結果オーライっていうことにしとくか。
だって今の僕、実は凄く嬉しい。
こんなに強くなったのに、まだ僕を求めてくれているなら自分がやることなんて一つだ。
何度でも、何度でも。
『わっ…!あぶな…ありがとうございます。』
「気をつけて。
まあ、僕が、」
絶対に守るんだけどね。
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きのこ姫(プロフ) - 禪院が禅院になってますよ〜 (3月8日 10時) (レス) @page6 id: 5521fd53c5 (このIDを非表示/違反報告)
園実(プロフ) - 言葉の使い方がおかしい所が多すぎて… (2022年2月14日 6時) (レス) @page18 id: 583543dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - ayastさん» ありがとうございます…!そう言っていただけて本当に本当に嬉しいです…(涙)この作品を見つけてくださり心より感謝しています^_^ (2022年2月12日 21時) (レス) id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
ayast(プロフ) - 連載お疲れ様でした!!お話大好きでした! (2022年2月9日 23時) (レス) @page35 id: af36fdec29 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - はなさん» わわわ…!本当ですね!教えていただきありがとうございます🙇🏻♀️ やっぱリップ、、じわじわきます…www (2022年2月5日 22時) (レス) @page25 id: 960672bf5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃっぱ195 | 作成日時:2022年1月20日 21時