本気じゃなかったのに【轟焦凍】［完］

35話 ページ36

「おい、飯田。Aはどうした。」


「いや、僕も何も聞いていません。
…はっ！委員長たる者、クラスメイトのことを把握していなければならないのに…！」







……A、何やってんだ。


廊下から相澤先生と飯田の会話が聞こえてきた。




俺が日和っちまってAを迎えに行かないまま学校に来ちまったけど……






「おいコラ、半分野郎。
テメェ、"彼女"はどうしたよ。」



「………わかんねぇ。
俺がどうにかできんのかも……」



「ﾁｯ！」




ドンッ！！！






「ちょ…！爆豪くん？！何をして……」





「アイツの"彼氏"ならもっとちゃんとしろや！！
俺が何のために身ィ引いたのかわかってねェんだなぁ？！」





…まったくだ。


前にも同じようなことを言われたのに、結局俺は同じことを繰り返すのか。




俺は、何もできねぇやつなのか。





「向こうの気持ちなんざ考えんな。
隔てられた壁一つぶち破れねぇやつなんか彼氏辞めちまえ。


アイツを助けて守れんのはお前だけっつー自覚持て。」





「爆豪……」





コイツ…こんなこと言うやつだったか？


……あぁ、その通りだな。




俺がぶち壊さないで誰が壁を壊すんだ。


Aがきっと、悲しんで困ってる。




それだけで十分だ。





「…行ってくる。」



「あっ！おい！
もう2限始まるぞ！！」







A、お前は困ってたから俺を頼ってくれたんだろ？


だから、彼氏に俺を選んだんだろ？




どんな理由だっていい、俺がその役割を任されたんなら絶対に全うしてやる。




俺は、お前の彼氏になりたいのと同時に、


お前のヒーローになりたい。







「A！いるんだろ？
なんで何も言わねぇで1人で抱え込むんだ！」


『と、轟くん……』




「俺が絶対全部受け止めてみせる。
A、俺を頼ってくれ。」






扉越しに訴える。


今すぐこの扉を破壊することだってもちろんできる。



でもきっと、その壊し方は違う。






『……無理、だよ…ｯ。
もう自分のことが嫌なの…。
何もできない自分が、全部を傷つける結末に追いやった自分のことが許さないの…ｯ！
だから…』




「だからなんだよ…！
じゃあお前は、今までの俺の気持ちと行動全部を無駄だって否定すんのか？」




『…轟くんは、何も悪くないよ。
悪いのは全部私なの…。



私、轟くんのことが本気で好きになっちゃったから…ｯ。』





「…じゃあ、何も問題ねぇだろ。」


『……へ？』

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