48話 ページ49
1人で取り残された公園に、雨が降り注いだ。
そこで、『あ…帰らなきゃな。』なんてブランコから立ち上がってフラフラと歩みを進める。
ねぇ、伏黒くん。
何を考えてたの?
なんだか、さっきの目が酷く揺らいでいたような気がしたの。
でも、真意を聞く勇気は持ち合わせていなくて。
結局、私は彼のことを何も聞けないままこうしてお別れしてしまった。
そう、"何も"
『………あ。』
思わず足が止まる。
目線を上げると、そこにいたのは傘をさした
『…紗里ちゃん。』
「Aちゃん?!びしょ濡れだけど大丈夫…?」
私になくて、あなたにあったものは何…?
降りしきる雨が服を濡らして気持ち悪く肌にくっ付く。
『……伏黒くんのこと、よろしくね。』
「え…?」
『じゃあね。』
私の心はこんなにも狭かったのかと、自己嫌悪に陥る半分で、でも今相手の顔が見れないのは仕方ないことだとギュッと拳に全部を込めてその横を通り過ぎようとした。
「…そっかぁ、フラれちゃったんだねぇ。」
『…………え?』
あからさまに高揚した声色に、徐に振り向いた。
その時、初めて紗里ちゃんの顔を見た。
「うんうん…伏黒くんはとっても良い判断をしたと思う…!」
幸せそうに、口角をこれでもかというほどに上げて笑っていた。
ゾッ
何、これ…鳥肌が止まらない…。
「大丈夫だよ!伏黒くんは私がちゃんと大事にするからね!
Aちゃんも幸せになれるよ!
私の愛する人にフラれたんだから!」
しきりに雨の強さが増した気がした。
コンクリートを打ち付ける水の騒音の中でも、その気味の悪い発言は私の耳にはよく届いていた。
この子は……何なの?
伏黒くんのことを純粋に好きなんだよね……?
「はい、傘貸してあげるねっ。
風邪引いちゃダメだよ?
明日学校に来られなくなるから。」
『あ……え、』
「あ、私は大丈夫!傘2本あるの!
ふふ、じゃあね。」
その後のことはよく覚えていない。
気がつけば家にいて、びしょ濡れの服を脱ぎ捨ててお風呂に入った私は、多分ご飯も食べずに眠りにつこうとした。
嫌な記憶を消したくて
これはきっと悪夢だって信じて
外から聞こえる雨音がかき消してくれると信じて
ひたすらに声を上げながら泣いて、夢に落ちた。
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美悠 - ちゃっぱさん» じゃあ洪水のように泣きますねw(え?)続編おめでとうございます!!! (2022年3月17日 20時) (レス) id: 4ccee94cf3 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - 美悠さん» 大丈夫です。その涙、受け止める覚悟は済んでます。地中海の底までサヨナラしたいですよねっ♡() (2022年3月17日 19時) (レス) @page50 id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
美悠 - 読んでて泣きそう…どっちもいい子すぎる…とりあえず紗里ちゃんは沈めてきます…☆(野蛮) (2022年3月14日 23時) (レス) @page48 id: 4ccee94cf3 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぱ(プロフ) - 美悠さん» 優等生と思わせておいてからの、その見た目に反してってやつですよね…あぁ、好きぃ (2022年3月14日 1時) (レス) @page48 id: 12eaed4cf4 (このIDを非表示/違反報告)
美悠 - ちゃっぱさん» 恵ちゃんは美形でクールですけど、実は元ヤンなところ凄くポイント高いんですよ笑 (2022年3月11日 21時) (レス) @page46 id: 4ccee94cf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃっぱ195 | 作成日時:2021年12月26日 0時