雨の日に虎を拾った【呪術廻戦】

28話 ページ29

「何見たい？」


『悠仁くんが見たいのはないの？』




2人で何を見るか決めずにここまで来てしまった。




…というより、これで悠仁くんと2人でお出かけするの2回目だ。



前回は散々なことがあったけど、今日はちゃんと楽しめるといいなぁ。





「ホラーは？」


『………もしかして、あれ？』




私が指差す方には、最近話題になっているホラー映画。



ホラー映画がそこまで苦手なわけじゃないし、むしろ予告映像で気になっていた作品だから正直アリだ。




……でも、女の子っぽくないって思われたら嫌だな。




『……いやいや、今更何考えてんの。』


「どーした？
嫌なら俺は別ので大丈夫だよ。」


『い、嫌じゃないよ！見よう！うん！』





ここ最近、本当に私はどうしちゃったのだろうか。


悠仁くんからどう見られるかとか、どう思われるかとか、そんなことしか考えていない。




悠仁くんのことばっかり考えて………







「待っ……て。
想像の何倍も怖ぇんだけど…！」




ｷﾞｭｯ




『………エ？』


「うぉっ……！」





いや…ちょっと待て。


ｷﾞｭｯ…て、今私の手握ってる？




これは恋人同士がよく映画館デートでするやつだ。




ﾄﾞｸﾝｯ




なんだか胸が痛い、顔も熱くなってきた。



でも、怖がる悠仁くんは無意識なのかそんなこと全然気にしていないし、むしろ今この手を離せば大声で叫びかねない。






結局、エンドロールの最後まで手は繋がれたままだった。







「なんでAより男の俺が怖がってたんだろ…恥ずかしい。」





それは私が映画に集中できていなかったからだよ、なんて言ったら失礼だからやめておく。



でも、手を繋いでいた話題が出ないってことは別に悠仁くんにとってあれは普通で、意識的なことではなかった、ってことなのかな。






………なんだか、モヤモヤする。






『……お手洗い行ってくるね。』






少し深く息をする時間が必要だ。



私は今まで悠仁くんの言動に意識したことがなかったのに、最近、特に今日は一つ一つの彼の行動に翻弄させられている気がする。




無駄に深読みして、勝手に疲れてる。





変な気持ち。






『………よし。』





気合いを入れ直して悠仁くんの元へ戻ろうとした。





「ねぇ、いいじゃ〜ん。
俺と遊びに行こうよ。」



「あの…本当にやめてください。」






『……。』




おっと…今度は第3者目線ってか。



でも……なんだろう。

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