【○】短編集 そのいち

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「 ・・・なぁ、場所違くなぁい？迷子になってもうた？ 」



優しそうで僕より二個下のスタッフの柚希くん、ゆうたかな。僕やメンバーにも懐いてくれてて後輩のように可愛がってんやけど。

その柚希くんに案内されて着いたのはスタジオやなくて、非常口前の、行き止まりの廊下。僕も初めて来たところ。死角になってるらしくて、人気が全く無い。


柚希くんが僕の肩を掴んで、引き寄せてから抱き締める。
別に嫌とかはちゃうんやけど、ビックリしてもうて、バッ、と突き放してまう。




「 あ、ご・・・ごめんなぁ 」



「 ・・・ずっとこうしたかったんです。安田さんに好きな人がいてもそれでも好きなんです！ 」







彼の真剣な目を見ていたら、どう返せばいいかわからんくて、戸惑ってると、柚木くんはさらに僕との距離を詰めて、顔が近づいた。







(・・・キスされる)



そうわかった瞬間に、後ろから腕を引っ張られる。
そんで、
ふら、とよろけた僕を抱き締める大きなからだ。








「 ・・悪いけど、人のモンに勝手に手ぇ出すなや。・・はぁ、・・・ちゅうか、なんでお前もされるがままになってんねん、抵抗しろや。 」





「 おー、くら・・・ 」




走って僕を探してくれたんやろうか、背中越しに感じるおーくらの胸がドキドキゆうてるし、息が切れてる。

柚希くんは
「 す、すみませんでした・・・ 」
とだけ謝って逃げるようにどっかに走って行ってしもた。








「 前からアイツやすのこと狙ってたん分かってたからなるべく見張ってたんやけど、・・・ごめん
アイツにやすがキスされてたらホンマに俺嫉妬で何してたか分からんわ 」





向きを変えてもう一度正面から僕を抱き締めるおーくらに、僕も抱きしめ返す。
そんなん気付きもせぇへんって、・・・でもおーくらが僕のこと守ってくれたんがとても嬉しくて。



「 い、いや・・・僕こそごめんな？ 」



「 何に対して？キスされそうになったこと？それとも嫌い、って言うたこと？ 」




「 全部。ホンマにごめんなぁ。・・・折角久々に会えたんに、おーくらが成田くんの話ばっかするんやもん。嫉妬した。つい言うてしもたけど嫌いやないから・・・大好きやで 」






「 もー・・・お前はほんとに可愛すぎやって。まあでも嫌いになっても、また惚れさせたるから。覚悟しいや 」









そう言ったおーくらは、ゆっくり僕にキスを落とした。

嫉妬も、たまにはええかもしれんなぁ？









エンド

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