世界、彩る ページ6
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いつからだろう、この容姿と頭脳に期待した人達が、完璧であるという俺の虚像を作ってしまった。
都合の良い夢を見たかったのかもしれないけれど、この世に完璧なひとなんていないのに。
虚像を壊せる程強くなかった俺は、中身を全部捨てて、それに成り代わった。夢を見させてあげた。
なのに聞こえてくる言葉は、悪口と陰口。
意味が分からなかった。そして、俺に何を求めているのか分からなくなった。同時に、世界に色が消えていることに気が付いた。俺は、俺ではなくなっていた。
灰色、だった。
いや、そもそも色なんてもう付いていなかったのかもしれない。
俺は、この世界を嫌っていた。
だけど、彼女がいたから、いたせいで、嫌う事が出来なくなった。
「後、もう少しだね、」
憎らしい程の満天の星空の下、Aの横顔が今すぐにでも消えそうで、美しくて、何だか泣きそうになって、聞こえないふりをした。
ああ、この世界が消えるのなら、もっと言いたい事はあったのに。高校の時から好きだったよ、とか、この世界に色を付けてくれたのはAなんだよ、とか。
少しキザっぽい？もういいよ、どうせ終わるんだから。そう思いつつも言えなくて、この気持ちは終焉と共に仕舞っておく事にした。
「…ねえ、もう終わるけどさ。この世界、やっぱり嫌いだった？」
Aの方を見ても視線は絡まなくて、また見上げた。
初めて会った時、あの屋上で、顔も知らなかったAに、そんな事を口走ってしまった。何故か、と言われても、俺にも分からない。俺は慌てて張り付いた笑顔で取り繕ったけれど、それもすぐに見破られてしまった。
今思えば、不思議な奴だった。だから、かもしれない。こんなに、惹かれてしまった。
Aは、俺の事胡散臭いとか言うけど、これは嘘じゃないから。嘘に塗れた虚像じゃなくて、俺自身の、答え。
「…嫌い、ではなかったよ」
ごめんね、やっぱり『好き』とは言えないや。
もう一度だけ。そう思って、Aの方を見れば、視線が絡まって、少し驚いた。
そして、ゆっくりと、綺麗に、笑った。
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作者名：みん x他3人 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/awoike_3th
作成日時：2018年6月3日 20時
