世界の終わり、君の隣【A3!】 (ページ12)

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君の王子様にページ12

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上手く笑えている気がしない。情けないなぁと自分を自嘲することしか出来ず、ぎゅっと握り締めた手のひらに爪が食込んで、痛みが走る。24時間が短いなんて思ったことはなかった。時が経つのは早いなと感じても、短いなんて思ったことはない。当然のように、明日がやってくるものだと思っていたのだから。明日があるから、次があるから、あとであとで。そんな安易なことを考えていた自分が馬鹿だ。時計を確認すれば、22時まであと1時間。まだ間に合う。彼は、外へ飛び出した。あと1時間で世界が終わるというのに、想像以上に町は静まり返っている。それが逆に恐ろしく感じて、こんなに焦っているのは自分だけなのかもしれない、と孤独感すら感じられた。彼は、足には自信があったはずなのに目的地に着いた時には息が上がって、うまく呼吸が出来ない。

「椋くん」

柔らかな優しい声。香る柑橘系の甘酸っぱい青春の匂い。顔を上げれば、そこには会いたかった彼女の姿がそこにはあった。君は何を感じて何を想って、今ここにいるのだろう。昨日彼は、「世界が終わる、1時間前嫌じゃなかったらこの場所に来て欲しいだ」なんて、何度も見た少女漫画みたいな臭い台詞を口にした。声を出したい、君と話がしたい。それなのに、ぐるぐると脳内を巡る言葉は口から出てくれず喉元で、突っかかったまま。言わなきゃ、言わなきゃ損するって分かっている。

「Aちゃん、」
「なーに、椋くん」
「こんな時に言う僕を許して」
「私もこんな時にしかきっと聞けないと思う」

ぐっと彼女の両手を握りしめて、目線を合わせる。今なら言える、今しか言えない。時計の針は止まってくれない、気付けばあと20分。今なら、今この一瞬なら、憧れの王子様になれる。

「好きです、Aちゃん。こんな僕を唯一王子様にしてくれる君が、大好きです。僕は、Aちゃんの王子様になれますか？」

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