丸山さんの婚約者。 (ページ4)

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「何していらっしゃるのですか？」

私が洗い物をしているとピンクのふりふりのエプロンを着た大倉さんが出てきた。

「皿が溜まっていたので少し洗い物を…！勝手な事をしてしまい申し訳ございません…！」

「いえ、Aさんのお手を煩わせてしまい申し訳ございません。あとは私がやりますのでAさんは和室でゆっくりなさってください。」

癖で皿を洗ってもた…。
大倉さん、怒ってもたかな…。
でも私が勝手な事をしたのに暴力を振るわないなんてなんて優しい人だろう。
この世の中にもそんな人が存在したんやな。

私はもう一度
「申し訳ございません」
と大倉さんに謝り和室に戻った。

そしてしばらくして、
「ただいま」
という大倉さんとは別の男の人の声が玄関から聞こえた。

大倉さんは私に、
「Aさんはそこでお待ちください。」
と言って玄関へ向かった。

そして、私の前に再び現れた。
今度は男の人を連れて。
その人は大倉さんと同じスーツ姿でふわふわパーマ、切れ長の目艶ぼくろが印象的な背の高い男性だった。多分大倉さんより少し低いくらい。

私は男の人にしばらく見とれていたけど我に帰り

「永里家から参りました永里Aと申します。どうぞよろしくお願いします。」
と自己紹介をした。

男の人はニコッと笑って
「丸山組若頭丸山隆平です。よろしくね。」
と言った。
人懐っこい柔らかい笑顔がどことなく章大を連想させて少し胸が痛くなった。

それにしても優しそうな人だ…
丸山さん…
噂とは全然違う…

「大倉、ちょっと2人きりにしてくれへんかな？」

「分かりました。」

丸山さんの言葉に大倉さんが部屋を出て行く。
少し心細い。

「Aちゃん、最初に言っておくけど、僕は君を愛する事ができひん。」

「はい。」

政略結婚やもんね。
愛してもらえる訳無い。期待すらしてなかったから別に驚くことではない。それよりいきなりちゃん付けとは。かなりフレンドリーな人なんや…

「Aちゃん驚かへんのや。珍しいな」

丸山さんは笑いながらそう言う。

「政略結婚です。愛して頂こうなんておこがましい事思っておりません。」

私は淡々と答えた。

「それなら話は早いわ。要するに形だけ。僕はAちゃんに住む場所と食事…あと衣服と金銭？を提供する。その代わりにAちゃんには形式だけでの妻になってもらう。ええな？」

「はい。」

住む場所と食事を与えてもらえるだけでもありがたいのにその上衣服と金銭まで？優しい方だなー…。