丸山さんの婚約者。 (ページ3)

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車に揺られる事1時間。

「ここが…丸山家…？」

私の前にはこじんまりとした一軒家。
普通の家よりは造りが良いが永里家や安田家の大豪邸に比べたら少し小さかった。
別に不満があるわけでは無い。
ただ、想像していたのと違っていただけ。
…それに…
もう私は永山家に捨てられたようなもの。
丸山さんにまで捨てられたらもう自力で生きていかないと行けなくなる。
その場合中卒の私を雇ってくれる企業なんてほぼ無いだろう。
私は送ってくれた使用人に礼を言い意を決してインターホンを押した。

「はい」

落ち着いた男性の声が聞こえる。

「丸山家に嫁ぐ事になりました。永里Aと申します。」

「永里様ですね。少しお待ちください。」

そう言って家から出てきたのはすらっと背が高くとても顔が整ったスーツを着た男の人だった。
この人が…丸山さん…？

「初めまして。私はこの家の使用人として働いています。大倉と申します。まr…若頭は現在仕事に出ておられるので中でお待ちください。」

なんだ、丸山さんじゃないのか…。
少しほっとしてしまった。

和室に通された私は大倉さんに促され畳の上に正座して座った。

「こちらをどうぞ。」

大倉さんがお茶を置いてくれる。

「ありがとうございます…。あの…勝手に頂いてよろしいんでしょうか…」

「大丈夫ですよ。あと、足をお崩しください。」

「無礼になってしまうんじゃ…」

「そのくらい…まあそのままでも良いですよ。若頭が帰ってくるまであと1時間ほどあります。どうぞごゆっくり。」

「わざわざありがとうございます…」

私が礼を言うと大倉さんはニコッと私に微笑んで部屋を出た。

大倉さん…良い人や…。
わざわざお茶まで出してくれて…
章大以外に私に微笑んでくれる人に出会ったのは初めてやった。
しかしその一方で丸山さんに会うのが余計に怖くなった。
どうしよう。勝手に座っているのを怒鳴られたら。勝手にお茶を飲んでるのを怒鳴られたら。
私は落ち着かずにとりあえず飲み終わった湯飲みを持って流しに持っていく事にした。
えーっと…流しはどこだろう…。
あ、あった。
実家より小さめの家だったのですぐに見つかった。
流しには皿が溜まっていた。
どうしよう…洗った方がいいかな…。
私は少し考えて洗う事にした。
どうせこの家でも使用人以下の扱いを受けるに違いない。今からでもこの家の家事をしとかないと。