第百七十八話 砂漠を往く ページ49
双葉のパレスはとにかく暑い。それにその中心がすごく遠かった。とてもじゃないが足で着きそうな距離ではない。ということでモナカーで砂漠を進んでいるのだが、いかんせん暑い。
怪盗団のメンバーは一人残らず、ぐったりとしている。
「あつ〜」
「言わないで…。窓開けて50℃の熱風に当たるよりマシ」
「だんだんと意識が遠のいてくるね…」
「わかるかも…。ぼーっとするよねぇ」
「二人とも水は飲んだの、って一本もなかったわね…。ハァ……」
身体も汗でびっしょりだ。
体育のあとでもこんなに汗をかいたことはなかった気がする。シャツも身体に張り付いていて、なんだかヤな気分だ。
「ねえ、後ろは…？」
「……ん？」
反応がなかったので振り返ると男子三人は一人残らず、女子の汗で透けてしまった下着をまじまじと見ていた。その様子はいくら大切な仲間でも許せない。その思いはAと杏で合致していた。
「準備はいい？A」
「もちろん。いつでも」
二人は拳を握りしめた。
しかし、最も力を込めたのは肘。
「「鉄拳制裁！！」」
肘で思いっきり男子の顔に攻撃を与えた。
女子は強し、だぞ。
「バーカ」
「ほんとほんと。って、あれ…！」
「見えてきた！」
砂漠の中で一つ輝く大きな建物。
王の墓である、ピラミッド。
双葉のパレスの中心部に怪盗団は足を踏み入れた。
ピラミッドの中は外からは想像できないほど涼しかった。これは単純に双葉の認知によるものだった。双葉のパレスの中心、それは双葉の部屋を表している。双葉の部屋の中が涼しいからここも涼しい。偶然だが助かった。
怪盗団はパレスの中を進んでいく。
ただ、そこでは怪盗団の服は変わらず、敵も出てこない。いつもとは違うイレギュラーに戸惑っていたとき、このパレスの中で初めて一人のシャドウの姿を見つけた。
「もしかして、こいつ…？」
「双葉の、シャドウ…」
シャドウは格好こそ違うが、それ以外は現実の本人まんまだったりすることが多い。双葉は一つしか歳が違わないとは思えないような、小柄で幼い子供のような可愛らしい顔立ちの少女だった。
「…我が墓を荒らすもの。何しに来た」
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作者名：すみれ | 作成日時：2021年4月4日 2時
