第百六十六話 佐倉双葉という人間 ページ37
「やらないと通報って、マジヤバイだろ…」
「『佐倉双葉』?」
「佐倉ってたしか…」
「マスターの苗字!」
「マスターにご家族は?」
「いたっけ?」
「聞いたことがない…」
「どうなってんの!?大らかすぎんだろ!普通なんか紹介とか挨拶とかねえの?居候なんだろ?」
「まあ事情が事情だからな…」
「予告状が届いたのもマスターの家だし、関係があると考えるほうが自然よ。アリババが『どこの佐倉双葉』か、言わなかったことも理由の一つ。名前だけで十分だと思ってるんじゃない?」
となると、Aが前に言ったように近くの誰かによる仕業という節が強くなってきた。それもマスターに関係する誰かの。
「アリババが携帯のアカウントをどうやって突き止めたかはわからない。ただ、チャットで命じてくるというのはからかわれている気がしないでもないわ」
「要求がアレじゃあね……」
「試されているのか?」
「とにかく、佐倉双葉に関してはマスターに一度聞いてみるべきだと思う」
「それがいいだろうな。今出来ることはそれくらいだし、ゴシュジンも心当たりがあるかもしれない」
「蓮、慎重に頼むぞ。マスターに正体を悟られないようにな」
「わかった」
その日の夜にチャットで蓮にどうだったかを聞いてみたが、話したくなさそうと返ってきた。話したくない、裏を返せばそれだけ何か事情がある、ということだろうが二人に無理をさせてまで聞きたくはない。佐倉双葉については、マスターから話してくれるのを待つしかなかった。
「マスターが女の人に、脅されてた…?」
二日後に話がある、と蓮はみんなを集めた。
そこで蓮が話したのはマスターが双葉に対して酷い行いをしている、という先日会った女性が言っていたことだ。
「私、よく知らないんだけどマスターってそういう人なの?」
「そんな人じゃない」
蓮も直接聞いたものの、その話を真実だと思うことはできなかった。
「うん、私もそう思いたいんだけど、確証はないんだよね…?」
その時、アリババからの連絡が来た。
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作者名:すみれ | 作成日時:2021年4月4日 2時