第百四十五話 汚らわしいハエ ページ15
潜入ルートはとっくの昔に確保している。あとはオタカラを奪い取るだけだ。怪盗団は地下のエレベーターに乗る。この先にまだ実体化していなかったオタカラがあるはずだ。
「あいつ、金城!?」
「待ち構えてやがった!というかなんだぁ!?」
スカルは思わず大声をだす。気持ちはわからなくもなかった。なぜなら、オタカラが巨大な金庫で守られていたのだもの。
「この短期間で部屋ごと金庫に……。チッ、流石に銀行のパレスか」
「いらっしゃいませ。ようこそ、我が都市銀行へ。よく生きてここまでこれたねぇ。ずいぶん運が良いようだ」
「運?馬鹿言わないで」
「てめえを改心させてその口で全部白状させてやる。お前みたいなクズに苦しめられてるヤツらを俺たちが救うんだよ!」
「上が下をこきつかって好きなだけ搾り取る。そういう順番がこの世には存在しているんだ。貴方がたも、おとなしく金づるになりなさいよ!」
「絶対嫌!人が誰かを好きにしていい権利なんて存在しない。順番なんてものはない!」
「オレだって散々やられてきたんだ。苦汁を舐めさせられ、クソ底辺から這い上がって、ようやくオレが刈り取る番ってワケさ!」
「卑怯な事しかできない、可哀想な人よね」
「勝ち方に綺麗も汚いもない!クレバーなヤツが勝つ!賢く強い者は、弱者を食い散らかして当然。ネットの知識だけで世の中悟ったような気になる頭のわいたクソガキは良いカモだよ」
「ダマされるのは常にバカだ!バカはそのバカの責任をとらされるだけ。学習しないバカは一生バカなんだよ!バーカ!」
「バカバカうっせーな!」
金城、貴方が今まで生きてきて学んだのはそれなんだね。人によって信じるものは違うから、一概に間違ってるとは言ってはいけないのかもしれない。でも、貴方の考えは私たちの正義に反する。私たちは私たちの正義を貫くために、貴方の欲望を頂戴する。
「クククク……たかるだけ…たからせていただきますよぉー!」
その時、金城に異変が起こった。体の形が変形し、背中から嫌悪感を誘う羽音を鳴らす羽根が現れ、目はもう人間のものではなくなっている。この姿はハエだ。
「オレ一人でじゅうぶんさ!さあ、やってみやがれYO!BABY!」
「汚い金にたかるハエ、気持ち悪いのよ!」
「ギャハハハ!!行くぞ、クソガキどもがYO!」
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作者名:すみれ | 作成日時:2021年4月4日 2時