第七十九話 芸術とは ページ43
パレスを進んでいるとき、喜多川くんはすごく辛そうな表情をしていた。
そりゃあ、辛いだろう。
認めたくない現実を突き付けられて。
彼の痛みは私では計り知れない。
でも、目を背けてはいけない。
前を向かなければ。
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無限の泉のあるフロアまでついたときに、前を敵に塞がれた。
出口はもう目の前なのに……!
「あーっははははっ!」
後ろから高笑いが聞こえてきて、振り返るとその正体は斑目だった。
しかも奇抜な、まるで殿様のような格好をしている。
あばら家であった質素な格好とは大違い。
「ようこそ、斑目画伯の美術館へ」
「え……先生、なのですか?嘘ですよね?」
「あんなみすぼらしい格好は『演出』だ。有名になってもあばら家ぐらし?別宅があるのだよ、オンナ名義だがな」
……なんて人なの。
「なぜ、盗まれたはずのサユリが保管庫に?本物があるのに、なぜたくさんの模写を!?」
本物のサユリ……?
どういうことだろう。
「聞かせてくれ。あなたが先生だというのなら!」
「『盗まれた』など、私が流したデマだ!全部、計算し尽くされた『演出』なのだよ!」
「どういうことだ」
サユリは元弟子に盗まれたのは真っ赤な嘘。
全てはこの人が作ったデマカセだったのだ。
そんな酷いことを可笑しそうに笑いながら話す斑目に怒りを覚える。
信じていた人だって、たくさんいるのに……!
「絵の価値など所詮は『思い込み』。ならばこれも正当な『経済行為』だ!」
「『経済行為』?ソレ犯罪行為の間違い!貴方からこの変な美術館が出来たの、すごく納得したわ!」
「てか、あんた芸術家なんでしょ!? 盗作とか恥ずかしくないわけ!?」
「芸術など、道具に過ぎぬわ!カネと名声のためのな!」
そんなわけない。
芸術は人の心を豊かにしてくれるものだ。
確かにいい作品にはお金や名声が手にはいるけど、決して道具なんかじゃない!
「なら、貴方の才能を信じている者は……天才画家だと信じてきた人々は……!」
「これだけは言っておいてやる、祐介。この世界でやっていきたいのなら、私に歯向かわぬことだ」
「有能な弟子を集め、着想を吸い上げれば才能ある目障りな新芽も摘み取れる。着想をいただくなら、大人よりも言い返せん子供の将来を奪った方が楽だ。喋り疲れたわい、そろそろ「許せん」
喜多川くんは鋭く斑目を睨み付け、言い放った。
「許すものか、お前が誰だろうと!」
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すみれ(プロフ) - テイル@パピコ同盟さん» わかってくれますか!すごく嬉しいです(^^) 音楽を聴きながら読むのはやっぱり楽しいですよね〜♪そしてお話、是非したいです!少し忙しい身なので返信は遅くなるかもしれませんが、それでもよかったら私のボードに来てください!作品の感想もありがとうございます! (2020年6月28日 15時) (レス) id: 28009c6402 (このIDを非表示/違反報告)
テイル@パピコ同盟(プロフ) - ペルソナ5sの曲を聴きながらこれを読んでいます!分かりますその楽しみ方!!いつか話せる時があったら話してみませんか?面白かったです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: a6ac34b766 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - 皇妃葎さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しくて舞い上がってました!いい作品だなんて言われちゃってニヤついてしまいました笑評価もありがとうございます!更新めっちゃ頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願いします♪ (2020年5月31日 13時) (レス) id: 28009c6402 (このIDを非表示/違反報告)
皇妃葎 - 続編おめでとうです!いい作品すぎて星を何回も押してる…。どうして一回しか押せないんですか!?更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月31日 10時) (レス) id: c6aa45914a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2020年5月24日 18時