第六十五話 弟子は作品? ページ23
そろそろ……いいんじゃない?
彼が絵を描き始めてしばらく経った。
杏にそろそろ例の話を……と目で訴える。
すると杏は頷いて、
「……ねえ」
喜多川くんに声をかける。
「……」
「喜多川くん?」
「……」
集中して絵を描き続ける喜多川くん。
こちらを無視しているというより、本当に聞こえていないようだ。
「呼んでんぞ?」
「……」
「……ダメだね」
「予定と違うぞ!油断させてとっとと事情言わすはずだろ?」
モルガナはそう言うけど、こうなるだなんて誰も想像できなかったし。
私はこう言うしかできない。
「……あちゃー」
「あちゃーじゃねーよ!もう、こうなったらワガハイ部屋の外に出てみる!」
「見つかるな」
「ふっ、誰に言ってる。ヒマすぎるからな。ちょっと偵察でもしてこよう」
気をつけてね……と不安な気持ちを抱えつつモルガナを見送る。
こっちは……。
「ねえ、喜多川くん!」
「……」
長くなりそうだ。
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一時間位たったころ、喜多川くんの筆が止まった。はぁ〜とため息をついてる様子からあまり調子が良くないのかなと思う。
「ダメだ……」
「ごめん……私じゃダメ?」
「いや違うんだ。ただ……」
喜多川くんは深刻そうに悩んでいる。
何がいけないんだろう。
「今日は……ちょっと調子が出ない。悪いが日を改めさせてくれ」
え、それじゃダメ。
「フザけんな!何時間待たされたと思ってんだよっ!」
私たちはみんな立ち上がって、喜多川くんの方を見る。こうなったら仕方ない。
聞いてしまおう。
「お前んとこの先生の噂の話だ!」
「またそれか……」
「私が個展で見たあの絵。本当は喜多川くんが描いたんだよね」
「それは……」
心当たりのあるという返事。
そうなんだ、やっぱり。
喜多川くんも盗作をされて……。
「お前の先生、マジやべえんだけど。弟子をただの『物』だと思ってやがる。だから盗作だろうが虐待だろうが、そんなのお構いなしってわけだ。言っとくが俺らに隠し事、通用しねえからな」
「ははっ……何を言ってるんだか……」
「逆らえなかったんでしょ?でも私たちなら、きっと力に……」
「やめてくれ。お前たちの言う通り俺たちは先生の『作品』だ。勘違いしないでくれよ、俺は自分から着想を譲ったんだ。これは盗作とは言わない」
自分から……なんて嘘でしょ?
そんな悲しい表情を見て、ホントなんて思えないよ。
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すみれ(プロフ) - テイル@パピコ同盟さん» わかってくれますか!すごく嬉しいです(^^) 音楽を聴きながら読むのはやっぱり楽しいですよね〜♪そしてお話、是非したいです!少し忙しい身なので返信は遅くなるかもしれませんが、それでもよかったら私のボードに来てください!作品の感想もありがとうございます! (2020年6月28日 15時) (レス) id: 28009c6402 (このIDを非表示/違反報告)
テイル@パピコ同盟(プロフ) - ペルソナ5sの曲を聴きながらこれを読んでいます!分かりますその楽しみ方!!いつか話せる時があったら話してみませんか?面白かったです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: a6ac34b766 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - 皇妃葎さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しくて舞い上がってました!いい作品だなんて言われちゃってニヤついてしまいました笑評価もありがとうございます!更新めっちゃ頑張ります!これからもこの作品をよろしくお願いします♪ (2020年5月31日 13時) (レス) id: 28009c6402 (このIDを非表示/違反報告)
皇妃葎 - 続編おめでとうです!いい作品すぎて星を何回も押してる…。どうして一回しか押せないんですか!?更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月31日 10時) (レス) id: c6aa45914a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2020年5月24日 18時