04 . ごはんの香り ページ6
空中で一度高く飛んだのは、索敵の為だった。
何度か跳躍し、実弥に追いついたAは「実弥さん場所わかんないでしょう!」と実弥に向かって叫び、「遅せぇのが悪ィんだろォ」とまたもや首根っこを掴まれそうになったので、焦って更に2度跳躍して先頭を走ることとなった。
「つきました、ここです!」
見つけた鬼が巣食っていた家は、一見ただの定食屋であった。
Aたちが歩み寄ると、気づいた店主が中から出てき、手を挙げてニコッと笑った。
「らっしゃい!」
「分かってんだろォ」
「は?」
元気よく迎え出た店主に実弥が凄んだ。
店主は威圧感に気圧され後退りし、視線を下に下げ、腰にある刀をとらえて目をまん丸く見開いた。
慌てて両腕で顔を隠し守りの体制に入った店主を見て、実弥は顔を微かに顰めた。
「すッ、すみません!お金、お金は渡しますから命だけは」
「……ア?盗賊じゃねェよ」
「は?じゃあその刀は」
「あの、私たち鬼から人を救っていまして、この街に鬼がいるとの報せが入ってきたものですから」
「……鬼?なんの事ですか……?」
Aと実弥は店主を見、互いを見、Aは首を傾げた。
「テメェ」
「いや見ました私」
Aはううんと唇を尖らせた。
そうしてしばらく目を泳がせてから、店内に視線をやった。
客は4人。和やかな顔をしてうどんを食べている男と、店の奥で談笑している婦人と少女、そしてその隣に座っている幼子。
一見どこの定食屋とも変わらない。
Aはすぐさま店内から視線を外し、実弥を一瞥した。
視線に気がついた実弥は、Aが唇を店内を示す方に動かしているのを見て、つられて店内を見やる。実弥もまたすぐに視線を外して、刀を少しだけ抜き、刀身に腕を押し付けた。
Aはその横でにこやかに微笑んだ。
舌を強く噛み欲求に堪え、それでもなお微笑み、口内が血の味に侵食されても笑顔は絶やさない。
Aはつんと肘で実弥をつついたが、実弥はわかったと言わんばかりに黙っていた。
58人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みく(プロフ) - すごく素敵なお話でした!! 童磨くん素敵すぎます (2019年8月3日 14時) (レス) id: dac858329b (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - まほろさん» お読みいただきありがとうございます!そして嬉しいお言葉ありがとうございます。削除の件ですが、撤回しようと思います。貴重なお言葉ありがとうございました(●´▽`●) (2019年7月28日 20時) (レス) id: fe3c191e62 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 作品楽しく読ませていただきました。そして勝手ながら消してしまうのはもったいなとも思ってしまいます…いち読者の勝手なお願いではありますが、どうにか残していただくことはできないのでしょうか? (2019年7月28日 18時) (レス) id: 83522f25c5 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - りなさん» お読みいただきありがとうございます!そう言って頂けて、書き手として冥利に尽きます。ありがとうございます! (2019年7月27日 1時) (レス) id: fe3c191e62 (このIDを非表示/違反報告)
りな - めちゃくちゃ良かったです!!続きが楽しみです!応援してます!! (2019年7月26日 23時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さく | 作成日時:2019年7月23日 21時