03 . 夜闇の色風 ページ5
砂利道を走り抜け、田畑を飛び越え、農作業をしている農家に会釈をし目的地へと向かった。
爛々と燃えていた太陽は間もなく地に沈む。
宵闇が赤を飲み込んで空を支配し始めた頃、Aは目的地へとたどり着いた。
「遅せェよ」
目的地には既に一人、人がいた。
眼光の鋭い、傷だらけの厳つい男は、不機嫌そうな様子で樹木に寄りかかっている。
「実弥さんこんばんは!遅れてすみません!しのぶさんとお茶会していました!」
「知るか。早く行くぞォ」
「これが終わったらカステラ食べるんです、和泉堂の」
「だから知るか」
「もう早く終わらせましょう!えいえいおー!」
脳天に拳が降り注いだ。
実弥は痛がるAの襟首を掴んで、ズルズルと引きずり走っていった。
土埃が微かに舞い、ブーツの軌跡が土に残っていく。
Aは懐から入れ物を出し、中に入っているものを食んで、飲み飲んでから実弥の方をちらと見た。
「鬼の情報とかなにかご存知です?」
「知らねえなァ。狩りに行ったヤツらが全員殺されてるからな」
「あらっ」とAは口元を塞いだ。
「だから柱が2人送り込まれたんですね、私と実弥さん」
「喋る元気あんならテメェで歩け」
首根っこを思い切り持っていかれ、ぐわんと衝撃が走り、首が閉まって「ぐえっ」と奇妙な声が出た。
前方に放り投げられたことに気づき、同時にかなり高めの空中を舞っていることにも気づき、慌てて薙刀を構えた。
____雨の呼吸 弐ノ型 宵闇に村時雨!
地面に叩きつけられそうになった直前、刀を振りかざす。
地面に大きな亀裂が走り、土塊が飛び散り、体がふわりと浮いた。
飛来した土塊の上を転々と跳び回り、一度だけ高く跳んで、実弥の前に着地する。
刀身を鞘に収め、ふんと鼻を鳴らした。
「どうよ」
「なんか見えたかァ?」
「なによ褒めてよ!くそっ。見えましたよ、街中の店に1匹!」
「上出来じゃァねえか」
「行くぞ」と言うなり実弥は走り行く。
まさか褒めてくれると思わなかったAは一瞬あっけに取られ、すぐさま我に返り急いで小さくなった背中を追いかけた。
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みく(プロフ) - すごく素敵なお話でした!! 童磨くん素敵すぎます (2019年8月3日 14時) (レス) id: dac858329b (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - まほろさん» お読みいただきありがとうございます!そして嬉しいお言葉ありがとうございます。削除の件ですが、撤回しようと思います。貴重なお言葉ありがとうございました(●´▽`●) (2019年7月28日 20時) (レス) id: fe3c191e62 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 作品楽しく読ませていただきました。そして勝手ながら消してしまうのはもったいなとも思ってしまいます…いち読者の勝手なお願いではありますが、どうにか残していただくことはできないのでしょうか? (2019年7月28日 18時) (レス) id: 83522f25c5 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - りなさん» お読みいただきありがとうございます!そう言って頂けて、書き手として冥利に尽きます。ありがとうございます! (2019年7月27日 1時) (レス) id: fe3c191e62 (このIDを非表示/違反報告)
りな - めちゃくちゃ良かったです!!続きが楽しみです!応援してます!! (2019年7月26日 23時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さく | 作成日時:2019年7月23日 21時