【鬼滅の刃】あなたに雨を

28 . 明日ありと思う心の徒桜 ページ29

同時にAは、しょうもないなあとも思った。

Aには童磨のこの独白が一人劇に過ぎないと分かっていた。
童磨には感情がない。だからそれっぽいことをしている。そうに過ぎない。


「もういいから」


カナヲが言った。


「もう嘘ばっかり吐かなくていいから」
「……何？」
「貴方、何も感じないんでしょう？」


カナヲの顔は先のような恐ろしく鋭いものではなくなっている。
妖艶で、かつ背筋が凍るようなものになっていた。

Aは肉を全て食べ終えていた。
ここに来る前のも含めて7個。大きな怪我をしなければおおよそ1時間半は効力が続く。


「貴方には嬉しいことも楽しいことも苦しいこともつらいことも、本当は空っぽで何も無いのに、さもあるかのように取り繕って……。滑稽だね、馬鹿みたい。フフッ」


カナヲは蔑むように微笑んだ。


「貴方、なんのために生まれてきたの？」


瞬間、空気が恐ろしいまでに重くなった。
何もしていないのにビリビリと震え、今にも逃げ出したくなるほどである。


「……今まで随分な数の女の子とお喋りしてきたけど……。君みたいな意地の悪い子初めてだよ。なんでそんな酷いこと言うのかな？」
「分からないの？貴方のこと嫌いだから。一刻も早く頸を切り落として地獄へ送りたいから」

「それに……貴方が生きてることはなんの意味もないから、さっさと死んだら？」

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