両片思いⅡ【Fischer's】 (ページ21)

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No.66 いつでも頼れる兄貴ページ21

Silk side

みんなで海に行った日から時は流れ、もう夏休みも終わり。あの日から特に何も用事のない、ただ部活に行ってただ課題をする。その繰り返しの日々だった。

部活も調子が出ず、大会もあまりいい結果ではなかった。

明日からはもう学校が始まってしまう。また明日も一緒に登校できるだろうか。また普段通りに……とは、いかないだろうな。

“ごめん”

そう言ったAの声は確か震えていた。表情は見えなかったけど想像はつく。

そして何よりも帰りの車内で＿＿＿＿

＿＿＿＿車内で、Aとマサイが手を繋ぎあっていたこと。

Aがマサイの手を握り、マサイもまた握り返して。

シ「……別に、Aが誰と手ぇ繋いでようと勝手だろ」

そんなこと分かりきっているのにどこかモヤモヤして、心臓を掻き毟りたくなる。

林間学校の肝試しで繋いだ手の感触。白くて細くて力を入れれば簡単に折れてしまいそうで。その感触をマサイも味わったのかと思うと少し複雑で、言葉にし難い感情が芽生えてしまう。

あの光景を2人の向かい側で見ていた俺は心臓が締め付けられるような感覚に唇を噛み、これ以上意識しないように強引に目を閉じた。

俺だって誰かに恋したことはあるし、彼女もいた事がある。その時の感覚は確かに今のこれと似ているのだが。

シ「だけどなぁ……」

今まで友達としての“好き”だったのが急に異性として“好き”に変わってしまったと思うと、思考が受け付けない。信じられない、とでも言うように。

だから俺はずっと「Aはあくまで友達だ」と言ってきたし、今でもそう思ってる。

シ「わっっっかんねぇぇぇえ!!!!」

脳内の複雑に絡み合った思考が爆発し、その量と爆発の規模の分、俺は盛大に叫び声を上げた。

兄「うるっっせぇよチビ!!隣の部屋で俺が課題やってんの忘れんなよ!?」

俺の声に怒り心頭の様子で部屋のドアを開けた兄貴。チビは余計だ。

兄「課題がわかんねぇなら俺が教えてやるから黙れ!!」

シ「ちげーよもっと難しいもんだよ……」

課題なんてこれと比べたら簡単だ。この難題は、俺一人では解くのは難しすぎる。

兄「何だ？ひょっとして恋の悩みか？」

シ「まぁ…そういうやつ」

兄「人生の先輩であり恋愛の先輩でもある俺が聞いてやろうか？」

シ「その言い方ムカつく……けど、」

俺は今までに起きた出来事を大まかに話した。それから俺の複雑な気持ちも、分からないなりに。