水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ46)

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『幼馴染み』シルク×幼馴染みページ46

Aside

『あ』

「あ」

1週間続いている早朝4:00出発の出勤は最早恒例化してきているが未だ全く慣れることなく、朝が得意ではない私にとって早朝出勤が終わる明日が本当に待ち遠しい。

と考えていた頭でもまだ寝ぼけた目でも捉えた、タイミングを図ったのかと疑うほど私と同時に隣の部屋から出てきた男。背は低く若干がに股気味で、黒のキャップを目深に被ったジャージ姿。

私の隣の家には＿＿＿＿、

シ「朝早ぇんだな」

＿＿＿＿＿幼馴染みの好きな人(シルク)が住んでいる。

彼とは3歳くらいから遊んでいたらしく、小学校では毎日公園で遊んでいた。だけど中学校では一度も同じクラスになることなく、以前まではあんなに話していたのに時が経てばお互い変わり、接し方がわからなくなって。高校もバラバラになってしまえばもう。

3ヶ月前に私がこのマンションに引っ越してきてお隣さんに挨拶へ、と訪れて彼が出てきた時は本当にびっくりした。編集中だったのか片耳にイヤホンを差してパソコン片手に出てきた姿にも驚いたけど。

『もう明日で終わりだけどね。シルクもこんな時間にどうしたの？』

シ「ランニング。職業柄この時間の方が、なw」

そっか、そういえば彼は有名人なんだ。今シルクは日本中で、世界中で知られるほどなのか私は疎くて分からないけど、有名なYouTuberとして活躍している。

……きっと中には本気でシルクが好きなファンの子がいたり、シルクも素敵な恋人がいて同じ時間を過ごしたりしてるんだろうな。

シ「あぁ、仕事行くんだよな。引き止めて悪ぃ」

『全然。久しぶりに声聞けて、元気そうでちょっと安心した』

他の子達によろしくね、とだけ付け加えて小さく手を振り最寄り駅までの道を急ぐ。

引っ越してきた挨拶の時、中学校卒業してから初めてシルクを見た時に思った。彼も大人の男性になったのだと。私とほぼ変わらなかった身長も抜かれていて見上げるようになったし、当時より体つきもしっかりして。

だけど当時から変わらないこともある。少し鋭い目付きとか、厚い唇とか、さっきのがに股気味な所も……って、もちろんいい所もあるよ？笑うと柔らかくなる目付きとか、気遣い上手な所とか、内面は殆ど変わっていない。

＿＿＿そうだ、さっき伝えとけばよかった。

『かっこよく、なったね』

木々は既に葉が落ち寂しくなっている。小さく呟いた私の頬を冷たい風が静かに撫でた。