水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ45)

今日:19 hit、昨日:1 hit、合計:96,159 hit

『おあずけ食らう(2)』ダーマ×恋人ページ45

Aside

『来ないなぁ……ダーマ…』

冷たい秋の風が吹き付けるある日の午後、私は彼と約束した駅前の公園で彼が来るのを待っていた。

今日は珍しく、インドア派で滅多に外に出たがらない彼が外出してデートしてくれると言うから、私も少し気合を入れていつもよりお洒落をして来た。それから彼とお揃いで買ったコートも着て。

だけど、約束の時間、2時になっても彼は来なかった。スマホで連絡が来てないか確認してみても何もなし。

それが30分、1時間、2時間……と伸びていき、夕日も暮れてきた頃。暇を潰すために使っていたスマホの充電もゼロに。頼りになるのは公園の時計と街灯だけだ。

＿＿＿＿ダーマ、事故とか遭ってないよね…？

浮かんでくるのは最悪な場合ばかり。

そして、3時間半が経った頃。辺りはもう真っ暗で、さっきまで公園で遊んでいたはずの子たちも帰ってしまったよう。

私ももう帰ろうかと思って、手を擦り合わせて温かい息を吹きかけたその時だった。

ダ「A…？Aか……？」

『だ……ま…？』

今の気温に見合わない薄着、荒い息を肩でする彼の姿がそこにあった。

ダ「ごめんっ…！俺、寝過ぎてっ、それで……」

『…よかったぁ』

ダ「はぁ…っ？」

『ダーマに何かあったのかと思って……ほんと、よかったぁ…』

彼が無事だった安堵と来てくれた安堵でへたり込みそうになるのを、彼が受け止めてきつく抱きしめてくれる。

ダ「…あほ、俺の心配ばっかしやがって……ずっと1人にしてごめんな」

『ん、いい。そんな格好じゃ寒いでしょ』

私は自分のコートを脱いで彼に掛けると、彼の震えた指先が私の頬に触れる。彼の熱い身体とは裏腹に指先は冷たい。

『…やっぱり寒いから一緒にいれて』

そう抱きつけば彼は私をコートで包み込んでくれる。

ダ「一日無駄にしたお詫びと言っちゃなんだけど……これからうち来ねぇ？」

『……行く』

ダ「……泊まってくか」

『……夜、いっぱい遊んでくれるなら』

ダ「っ、あんま煽んなよ…」

それからまた再び彼の冷たい指が頬に触れ、ゆっくりとその唇が近づく。だけど私はその指先に自分の手を重ねて外し、

『まだダメ。夜までおあずけ……ねっ？』

ダ「っ……ばーか」

鼻がくっつきそうなくらい顔を近づけて、熱く吐息が混ざり合う。彼はもう我慢できないようで、早足で私の手を引く。でもそれは私も同じ。

『ダーマ…………好きだよ』

ちゅ、と彼の頬に1つ、キスを落とした。