水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ12)

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『春の甘えた日和』モトキ×恋人ページ12

Aside

春。

春の眠りは暖かくて、一日中好きな人と一緒に布団の中でイチャついていたいと思ってしまう。

春になると、誰かの温もりに包まれて眠っていたいと私は思う。

また、それは彼も同じらしく。

『ねぇ、そろそろ起きないと。今日撮影日なんでしょ』

モ「……もうちょっと。あと2分だけ…」

『もー、そう言ってから何分経ったと思ってるの。いい加減離して？』

モ「だってAあったかいんだもん……」

今日は撮影があるというのに、私を後ろから抱きしめて布団の中に居続ける彼。

『もしかして、今日は甘えたさんなんですか』

モ「そーかも。だから……ね、いいでしょ？」

『よくない！早くしないとみんな来ちゃうよ？』

そう、今日はシルクくんやマサイくんの家ではなく、この部屋……つまりモトキの部屋での撮影なのだ。

だというのにいつまで経っても起きる気配はない。

『こんなとこみんなに見られてもいいの？からかわれるよ？』

モ「ん、別にいい。見せつけてやればいいじゃん」

『もう……！モトキがよくても私は恥ずかしいの！』

モ「Aは俺といちゃいちゃしたくないの？」

『そーゆー事言ってるんじゃないの！』

みんなにこんなの見せられるわけない。……それに、こんな甘えてるモトキをみんなに見せたくない。私だけで知っていたい。

なんて、そんなこと絶対言えないけど。

『どーしたら起きてくれるの』

モ「えー。じゃあAがぎゅーってしてくれたら」

なんだ今の“ぎゅー”の言い方は。可愛い、もう可愛いしか出てこないよ、うん。

『はいはい、わかった。ぎゅーね』

私がそう言うと弱まる私を抱きしめる力。私はモトキの方を向いて彼を優しく抱きしめた。

モ「あとちゅーも」

『え、ちゅー!?』

「うん、はやく」と急かすモトキ。お互いの顔をぐっと近づけてキスをした。

私が離れようとすると、彼に頭と腰をぐい、と引かれてまた唇が触れる。今度は深く、甘く。

『んっ……は、もとき……！』

苦しい、と彼の胸を叩くと、ゆっくりと離れる唇。

そしてモトキは柔らかく微笑んだ。かと思えば勢いよく体を起こして私の上に覆い被さった。

モ「ごめん、抑え利かないかも」

私が困惑していると彼はそう言って、また私の唇にかぶりついた。

少しずつ間をあけてキスの繰り返し。そのうち玄関が開く音がして、シルクくん達の声が聞こえてきた。それでも止まないキス。

まぁ当然みんなにバレたよね。

あー恥ずかしかった。