10 ページ10
「Aさん、ちょっといい？」
「っ、はい」
制服がコンセプトな衣装に身を包むのは久々で、共演者の方々に挨拶回りをして自分の楽屋に帰ろうとしたところで声をかけられた。
なんで、なんて考えるほどもなくあの大型犬のような人を思い出す。会ったら聞かれるだろうとは思っていたけど、思っていたより早かったな。少しだけ高地くんの楽屋にお邪魔させてもらうことにしよう。
「あのさ、俺が口出しするのも違う気がするんだけど…」
「ジェシーくんのことですよね」
「うん。舞台終わってから連絡が全然返ってこないってもぬけの殻で。仕事は仕事って切り替え出来てるんだけどそれ以外がもう落ち込み方が半端なくて」
「突然連絡しなくなったことは謝罪します。ごめんなさいって伝えてもらえますか？」
「それはいいけど、もう連絡するつもりないの？」
「…スマホ壊れちゃってデータ飛んだんです。だから私のスマホには家族とマネージャーさん以外連絡先入ってないんです」
「そうなの？じゃあ俺がジェシーの教えるから、」
ごめんなさい、嘘です。ジェシーくんの連絡先だけ消したんですって言ったら高地くんは怒るのだろうか。
「高地くん、ジェシーくんには私なんかよりもっと素敵な人がお似合いだと思いますよ」
「んー…もしかしてなんだけど、大我に何か言われた？」
「っ、京本さんは関係ないです。私は京本さんとお話したことありませんから」
「そう？でも大我と話してたの俺見たよ、あの日俺も居たから」
あの日？本屋さんに高地くんも居た？ジェシーくんからも連絡が来ていたけど、まさか目撃されていたとは思わなかった。
「京本さんとは昔からの知り合い、です。久々に会って世間話を少し」
「知ってる？人って嘘つく時視線が変わるんだって、今のAさんみたいに。ねえ、大我に何言われたの？」
番組内では異名が付いてる高地くんとは思えない鋭さに驚く。
「ジェシーくんを弄ぶようなことはするな、そのようなことを言われました。なので連絡を絶ちました、これで満足ですか？」
「じゃあスマホ壊れたのも嘘？」
「…ジェシーくんの連絡先はちゃんと消したんで安心してください。京本さんにもそう伝えてください」
「それなら俺がもう一度教えるから」
「私の話聞いてました？連絡を取るつもりもないし、ジェシーくんを好きにはならない、絶対に！」
失礼します、と高地くんの楽屋を後にした。この後の収録が気まずいかもしれないことに気付き大きなため息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 410人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
