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勢いに押されて連絡先交換したはいいけど、確かジェシーくんて交友関係めちゃくちゃ広いんだよね？
「ということは連絡が来ることはな…くはないよね」
タイミングが良いのか家の玄関に入ってすぐ届いたメッセージは随分とシンプルで“これからよろしくね！舞台頑張ろう！”というものだった。こちらこそよろしくお願いします、と返信して静かなリビングへと足を進める。
「はあ…なにやってんだろ」
相手はアイドル、私なんかが隣を歩いていい存在じゃない。そう思って今まで告白も断ってたし連絡先の交換だってしなかった。プライベートで会わない、必要最低限の返信以外しない、と改めて心に誓う。
「彼がどう思うかわかんないけど」
貰ったばかりの台本を開けば台詞量の差に心が痛くなる。もっと、もっと頑張らないと。
「Aちゃーん！GoodMorning」
「おはようございます」
「ねえ！なんで返信くれないの！？」
「…忙しくて」
「嘘だね！Aちゃんのマネージャーさんから昨日仕事なかったって聞いてるもん。ついでにこの後暇でしょ？ご飯行かない？」
「いつの間にマネージャーと仲良くなってんの？あとご飯は行きません。無理」
あれからジェシーくんは事細かに連絡をくれるようになったけど、私は基本的には返さないと決めたからほぼ一方的に送られているようなものだ。
稽古期間が始まるまでは会うことはなかったけど、これから２ヶ月はほぼ毎日顔を合わせることになる。幸いにも周りに人が居ないタイミングで話し掛けてくれたからいいけど、もしこれが誰かに見つかったら…と考えるだけで疲れそう。
「あ！そうそう、これお土産ね」
「お土産？」
「差し入れとは別にAちゃんだけ特別！だからみんなには内緒ね？」
そういえば地方ロケに行ったと連絡があったっけ。渡された小さな紙袋を開けば中にはちりめん細工の猫のストラップが２つ。
「可愛い」
「でしょ？Aちゃん猫好きって聞いたから」
「ありがとう」
「どういたしまして！てことで、これは俺が貰うから」
「…え、」
「お揃い、だね。じゃ、今日も稽古頑張ろうね！」
ふいのにっこりアイドルスマイルは心臓に悪いからやめてほしい。黒猫と白猫のうち黒猫の方をジェシーくんがひょい、と取ってそのまま稽古場の方へ向かった。
お揃いって、そんなこと言われたら身に付けることなんて出来ないじゃない。
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
