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「Aちゃん実家帰るの？」
「え、うん。ああ、大我くんに聞いた？」
今の家は事務所が借りてくれていた家だから引っ越さなければいけない。とりあえず無職である私がすぐに家を借りられるとは思えないから実家に帰ろうとちまちま荷造りしては送っている途中なのだ。
「実家って、遠い？」
「遠くないよ。まあここからだと電車で20分とかかな？」
ジェシーくんのお家にお邪魔するのは２回目。インターホン鳴らしても出ないから貰った合鍵を使ったけど、ワクワクと目を輝かせたジェシーくんが玄関でお出迎えしてくれたのが数分前。
「これからどうするのかなって。みんなも気にしてたから」
「あー、仕事ね。とりあえず実家のお手伝いかな」
「Aちゃんの家って…？」
「昼はカフェで夜はお酒も楽しめるお店なの。ちっちゃいお店だし、大通りに面してないから隠れ家的な感じ」
「へー！オシャレなんだね」
「うん。若い女の子に人気みたい」
「でもAちゃんがお店に居たらバレない？大丈夫なの？」
「うーん、大丈夫なんじゃない？私そんなに人気なかったし」
自分で言ってて悲しいけど事実だし。実際何度か昼も夜もお店に行ったけどバレることはなかった。
「ジェシーくんにも会ったことあったよ？」
「え！？いつ！？なんで話し掛けてくれなかったの！」
「まあ、その時は好きじゃなかったし」
「そんなハッキリ言わなくても…でも今は？」
「ん？」
「今は！？」
「…好きだよ？」
ニコニコなジェシーくんに言わされたのに本人は嬉しそうだからいっか。
「今度さ、高地と行ってもいい？」
「いいけど、なんで高地くん？」
「ダディだから」
よく分からないけどお店の名前と場所をジェシーくんに教えた。高地くんてコーヒー飲めないんじゃなかったっけ？まあ他の飲み物もあるし、大丈夫か。
「こーちー！はやく！」
「うるせえな。急がなくてもカフェは逃げねえよ」
ジェシーに行きたいカフェがあると言われて渋々付き合う。俺がコーヒー飲めないの知ってるくせになんでカフェなんだよ。
「いらっしゃいませ」
「２人です」
「はい、こちらの席どうぞ」
連れられて来たのはこじんまりとしたお店。カウンターにはお酒のビンも並んでるから夜はお酒飲める感じかな？
「なにキョロキョロしてんの？」
「いや、別に？ほら、何にする？」
ニヤけながらメニューを渡すジェシーに首を傾げながらアイスティーを指差す。お願いします、と手を上げるジェシーはちょっとだけ格好よく見える。
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
