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“今から届けたいものがある”
「まったく、大我はいつも急なんだから」
高地がたまにふざけて“クソ坊っちゃん”って呼ぶけど、その横暴さというか強引さにたまに困ることがある。
本当にたまに、ね？
飲み仲間とほろ酔い気分で楽しんでいたのを切り上げて家に向かう。あの日から少しずつだけど気持ちは落ち着いている。というかみんなに助けられている気がする。それでもAちゃんのことを考える日がないわけではない。
帰宅して手洗いうがいをしていれば鳴るインターホン。ちらっと見えた大我と高地。高地？と思いながらどうぞ、とエントランスの鍵を開けて数分後、玄関のチャイムが鳴った。大我だってわかってたからそのままドアの鍵を開ける。
「お届けものでーす」
「はいはーい。印鑑はいりますか？」
なんてふざけてドアを開けると目の前にはAちゃんが居て一瞬時が止まったかのように息の仕方すら忘れて動きが止まった。
「え、大我？なんでAちゃんが」
「だからお届け“者”だって」
「いやいやいや、え？どういうこと？」
「じゃ、俺らは帰るから」
最後にAちゃんと会ってからまだ１週間くらいしか経ってないよ？嬉しいよ？嬉しいんだけど、でもなんで？
「待って！とりあえず中、入って。高地と大我も！」
「俺らが居たら話たいことも話せないでしょ。Aだけ置いてくから。はい、頑張ってね」
「た、大我くん！？」
じゃあね、と本当に高地と大我はエレベーターの方に歩いて行っちゃって残された俺らの間に気まずい空気が流れる。
「ここに居るのもあれだから、入って」
「…お邪魔します」
野郎ばかりが来るからスリッパなんて置いてないし、リビングはまだ綺麗なはず、だよな？洗濯物は朝のうちに片付けたし。
「えっと、コーヒー飲める？そこのソファー座ってて」
「あ、うん。ありがとう」
コーヒーメーカーのスイッチを入れてAちゃんの様子を盗み見る。ソファーにちょこんと座ってる姿が可愛い。
「どうぞ。ブラックで平気？牛乳ならあるけど」
「大丈夫、ありがとう」
どうしようか迷って隣に座った。体の左半分だけ異様に緊張しているのは気のせいじゃないだろう。
「大我と高地と会ってたの？」
「ううん、大我くんだけ。高地くんは大我くんが迎えに来てって呼んだだけ」
「そっか…あれ？大我のこと名前で呼んでたっけ？」
「芸能界入ってから苗字呼びにしてたんだけど、もう違うからいいよって言われて戻したの」
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
