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今日は次の舞台の顔合わせの日。オーディション時点では主演が誰かわからなくて世間に向けての発表も今日。
「今回は結構メディア入るらしいよ。噂では若手俳優かアイドルが座長だって」
「アイドル…」
「話題になる人で舞台が大成功ってなればうちらの株も上がるかもね」
主演の次の次の次の…チラシの隅の方に名前が載るうちらからしたら少しありがたく、それでいて少し厄介かもしれない。
もしも有名なアイドルな方だったらファンの方々の熱量が凄いからちょっとでも触れるシーンがあろうものなら……考えただけでもコワイ。
「はい、じゃあ顔合わせ始めていきたいんですが座長が前のお仕事が押してるそうで少し遅れるとのことです。先にヒロイン役の紹介から…」
めちゃくちゃ売れっこな人なのか。ということは結構話題になるかな？次々と役名と自己紹介が終わり、私も無難に終わらせてあと数人というところでドアが開いた。
「すみません、遅れました！」
「おお、お疲れさま。はい、今回の座長のジェシーくんね」
「どうも、ジェシーのSixTONESです。逆にね！」
「こらこら、ふざけない」
「SixTONESのジェシーです。えー、舞台の経験は皆さんより少ないと思いますけど精一杯頑張りたいと思います」
「はい、じゃあさっきの続きから…」
嘘でしょ、と思ってジェシーくんが椅子に座るのを見ていると目が合ってしまった。向こうも驚いたようで一瞬動きが止まったけどすぐに手元の資料へと視線を下げた。
「いやー、まさかジェシーくんだったとはね」
「ですね、」
「ミュージカルだし歌唱力は問題無いだろうし、何より楽しい現場になりそう」
「そうですね」
取材へと移動した主要キャストたちを見送って雑談しながら帰り支度をする。さっきまで話していた先輩は次の仕事があるとすぐに出ていってしまった。
まさかジェシーくんと昨日の今日で会ってしまうなんて思ってもみなかった。けれど、役的にジェシーくんとの絡みはないし、稽古期間も話す余裕なんてないだろうし、気にする必要はないかな。
今日は顔合わせだけで終わりだから帰ろうと鞄を手に持つと廊下をバタバタと走る音がして勢いそのままにドアが開いた。
「Aちゃん！待って！」
「ジェシーくん、」
「昨日の約束！連絡先教えて」
「約束した覚えはないけど」
「でも了承はしたよね？」
廊下が騒がしくなってきた。誰かに見られても厄介だからさっと連絡先を交換して私は足早に駅へと向かった。
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
