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スピリチュアル系を信じるか信じないかで問われたら“良いこと”だけは信じるくらいで、今まで朝の情報番組の途中にある占いも流し見するくらいだった。
「この先、そうね…３年前後で結婚すると」
“結婚”と言われてもピンとこない。だって私が好きな人はこの世には居ないのだから。
「えー、本当ですか？」
「ちょっと、なんでジェシーくんが反応するの？」
「ん？だって俺“運命の相手”だもん」
「…映画の中ではね？」
「あはは！そうだった！」
ジェシーくんのおかげで影が刺さっていた心に暖かい光が差す。その後も楽しく、は語弊があるけど順調に撮影は終わった。
「あ、ちょっと待ってください！Aさん、」
「はい？」
「その、途中に出てきた“大切な人”のお話って詳しく聞けたりする、かな？」
スタッフさんに呼び止められて立ち上がろうとしたのをやめて再び椅子に座り直す。今まで話したことはなかったし、マネージャーも心配そうに見ているけど、スタッフさんからしたらきっと必要のある話だから。
「カメラ回しててもいいですか？」
「あ、どうぞ。そうですね、大切な人は私が当時お付き合いしていた人です。２歳年上の一般の方で、彼が20歳になる少し前に…」
「Aちゃん、大丈夫？」
「うん。ありがとね、ジェシーくん。私が舞台の役で今までにない大役を貰ったんです。いつもは恥ずかしいから来ないでって言ってたんですけど、やっぱり嬉しくて見て欲しくて。でも、その公演を見に来る途中で、事故に巻き込まれて…最期に一目会えたんですけど、私が見に来てって言わなかったら彼は、今も生きていたかもしれませんね」
「そうだったんですね。このお話使っても大丈夫ですかね？」
「あ、はい。進行上必要なら是非」
「ありがとうございます。では以上で終わりです。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
バクバクと心臓が大きな音を立てている。涙が溢れそうになるのを堪えながらスタッフさんに挨拶をしてスタジオを出た。マネージャーは車を回す、と言って駐車場に向かったのを見届けて廊下を早足で歩いて楽屋のドアノブを握る。
「Aちゃん、待って！」
ドアを開けて中に入れば諦めてくれるだろうと思ったけど、ジェシーくんも一緒に楽屋に入ってきた。
「自分の好きな人が泣いてるのを黙って見過ごせないから。ほら、こうしたら俺にも見えない。だから１人で泣かないで」
くる、と反転させられて大きな胸に抱き締められ、涙が頬を伝うと我慢しきれずに声を上げて泣いた。
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
