運命なんて信じない (ページ21)

今日:8 hit、昨日:98 hit、合計:54,956 hit

21 ページ21

映画の公開日が近づくにつれて関連する仕事が次々と舞い込んでくる。朝の情報番組だったりゴールデンタイムのバラエティだったり、今日は占いを使う番組のゲストに呼ばれた。

「Aちゃん、今日もよろしくね」

「よろしく。今日もこの後仕事なんだっけ？」

「そうそう。ラジオのゲストだね」

忙しいのはありがたい、とは言えハードなスケジュールにちょっとだけ疲れも溜まっている。Aちゃんとご飯に行けたのも１回だけで、それ以外は数回のメッセージのやり取りだけ。進展なんてしてないけど後退もしていない…はず。

「じゃあお二方こちらにお願いします」

「「はい」」

Aちゃんと並んで座って、目の前にはこの番組ではお馴染みの占い師さん。まずは俺について色々と当てられてビックリ。

「えー！そんなんもわかるんですか」

「あとは他人を優先し過ぎるあまり自分を疎かにしがち、というのはジェシーさんの長所であり短所でもあるのかなって」

「あー…はは、当たってるかも」

自分よりも友達、メンバーの気持ちを優先しているという自覚はある。でも別に自分が損をしているとは思ってはいない。

「じゃあ次はAさん。んー、Aさんは18～19歳に大きく人生を左右されるような出来事があった？」

「そう、ですね。ありました」

「大切な人との別れだったと思うんだけども、Aさんの人生において大事な出来事なのね。ちゃんと乗り越えられる運命って出てる」

心配でAちゃんの方を向けば今にも涙が溢れそうになっていて、止めるべきか悩んだ。カメラに映らないテーブルクロスの下でぎゅ、と力いっぱい握っている手に気付いてそっと俺の手を重ねてみた。振り払われることはなく、少しだけ力が抜けたのを感じた。

「運命、ですか」

「うん。Aさんは運命の人と出会って別れたけれど、その人と同じくらい強い運命を感じる人と出会う。もしかしたらもう近くに居るかもしれない」

「へー！凄いじゃん！」

ちょっとでも和ませたくてリアクションを大きめにする。俺だったらいいのにな、なんてちょっとだけ思ったりなんかして。

「今度公開される映画が僕とAちゃんが運命の恋をするっていう内容なんですよ」

「あ、そうなんですね。凄く良いと思います。ジェシーさんとAさんの相性が抜群で」

「ですよね！凄く良い作品になったので是非劇場へお願いします！」

▽▽
フィクションなので占い内容についてはただの創作です。