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「……はいカット！！」
「お疲れさまです。以上でジェシーさんオールアップです」
「ありがとうございました」
大きな拍手と共に花束を手渡される。何回経験してもこの瞬間は感極まるものがある。
「お疲れさま」
「Aちゃんも。撮影楽しかったね」
「ふふ、そうだね」
監督やプロデューサーさん、沢山のスタッフさんとAちゃんや共演者の人たちと会うのも今日が最後。映像として完成する約半年〜１年近くはこの現場のみんなとはなかなか会う機会がないかもしれない。
「次会えるのは番宣とかかな」
「そうかもね」
「ねえAちゃん、」
「ん？」
「もう一度連絡先聞いてもいいかな？」
大我の家に集まった時にAちゃんが俺の連絡先を消したことも聞いた。高地も知ってて黙ってたことを大我と共に謝ってくれた。
「えっと、連絡先は前に…」
「消しちゃったって聞いた。勿論無理強いはしない。今度は返信に困るような動画とか絶対送らないから」
無理かな、って諦め半分で聞いたけど、断られたら泣ける自信がある。少しずつ少しずつ、Aちゃんとの関係は良くなっていたと思ったんだけど…
「わかった、いいよ」
「え！？本当に！？」
「うん。でも森本くんのギャグとか本当にやめて？あと松村くんの変顔とか、どう反応していいか困るんだから」
「ごめんね。だって樹に話題になるよって騙されたんだもん」
再びAちゃんのスマホに俺の連絡先が登録されたのを見て適当なスタンプを１つ送信。Aちゃんからもネコのスタンプが返ってきた。
「じゃあ、明日からも仕事頑張ってね」
「うん。Aちゃんもね」
“また明日”が聞けなくなった。でも、話す手段はまた出来た。今度は間違わないように、樹にアドバイスを求めるのはやーめた。
「おっはよー！」
「ジェシーご機嫌だね」
「見てこれ！」
先に来ていたメンバーにスマホの画面を見せる。Aちゃんとの新しいトーク画面。吹き出しが幾つか並んでるのは少しだけ会話出来たから。
「え、なにこの“趣味は？”って。そんなもんググれよ」
「好きな食べ物とかも調べればわかりそうだけど、」
「もう！ネットの情報よりもAちゃんと会話するってことに意義がるんだから！」
「あ！俺新ネタ出来たけど撮る？」
「ううん、もう慎太郎のギャグいらないよ」
「えー…残念だな」
しょんぼりする慎太郎には悪い気もする。あ、これも話のネタにしちゃおっと。
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
