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「はい、今日の撮影は以上です。お疲れさまでした！」
監督の声に周りのスタッフさんたちに挨拶してスタジオの楽屋へ戻る。舞台やドラマとは違う映画の撮影雰囲気にもやっと慣れてきたところだけど、全部が全部上手くいってるわけじゃない。
「あ、Aちゃんお疲れさま」
「お疲れさま。ジェシーくんはこの後も仕事？」
「うん！新曲のMV撮影あるんだよね」
「そうなんだ。忙しいんだね」
「まあね。ありがたいことだよね」
Aちゃんとは今は仕事仲間として作品の為にもちょっとだけ俺の気持ちは封印。友達と呼ぶにはまだ早いかもしれないけど、でも前より良い関係性は築けていると思う。
「Aさん、明日の撮影シーンでちょっと確認したいことがあるんですけど」
「あ、今行きます！それじゃ、また明日ね」
「うん。また明日」
学生みたいな“また明日”が嬉しくも寂しくある。だって撮影が終わったらもう聞けないじゃん。
つまり、この仕事が終わるまでに俺としてはステップアップをしたいわけなんだけど……
「デートにでも誘えばいいじゃん」
「そんな簡単じゃな…って大我がなんでいるのさ」
「それ高地にも同じ反応されたけど、そんなに俺の存在感ないわけ？ジェシーが自分の世界に入り込んだまま車に乗り込んだせいなのに」
「ごめん、ちょっと考え事してて」
「どうせAのことじゃん」
「うっ、そうだけど」
「普通にご飯誘えば？２人きりだと警戒するから他にも共演者の人誘うとかしてさ」
「なるほど…でも大我は俺がAちゃん好きなの反対してたじゃん。なんで今さら背中押してくれるの？」
「ジェシーが本気だってわかったから。遊び目的なら許さないって思ってたけど違うみたいだから」
「俺は最初から本気だったもん。ねえ、Aちゃんの好きな人のこともっと教えてよ」
「あいつはね、凄く優しい奴だよ。俺が落ち込んでる時は一緒に泣いてくれて励ましてくれて、なんとなくジェシーと似てるかな」
「俺と？」
「自分より周りを優先する、率先して前に出てくれる。大切な人の為に怒ることも笑顔にすることも泣くことも出来る。ね？ジェシーみたいでしょ？」
自覚はない、と言ったら嘘になるけど当てはまる部分もある、のかな？くらいで自分が褒められたわけじゃないのになんだか気恥ずかしい。
「あいつに似てるから反対してた。Aが立ち直れてないの知ってるから、ジェシーが近付くことで更に傷付くんじゃないかって心配だったの」
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作者名：いか | 作成日時：2023年9月23日 19時
