運命なんて信じない (ページ16)

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大我の家でご馳走してもらって食べながら考えた。俺がこのままAちゃんをただ好きなままではAちゃんは振り向いてくれない。それでも俺には諦めるなんて選択肢はなくて、だったら彼女の思いを尊重してあげればいいんだって考えた。

「お前本当にそれでいいのかよ」

「いいの！今すぐは無理でもいつかAちゃんが振り向いてくれるかもしれないし」

「そうかな？可能性は低いと思うけど」

「それでも俺はAちゃんが好きだもん」

大きなため息をつく高地には悪いけど俺は決めたんだ。帰り道で高地にだけ打ち明けた俺の気持ち、わかってもらえなくてもいい。決意表明って感じで話したかっただけだから。

それから１週間も経たずにまた６人での仕事の日、新しいスケジュールを聞きながらマネージャーから俺に個人仕事の話があると言ってきた。また舞台かな？バラエティかな？って考えてたけど全く違って驚いた。

「映画の主演？俺が？」

「そう。ジェシーにやってもらいたいんだって」

「本当に俺？北斗でも大我でもなくて、俺？」

ドラマ班と言われる北斗、大我、慎太郎じゃなくてなんで俺なんだろう？

「ジェシーにピッタリだと思うんだけど」

「いいじゃん。どんな役なの？」

「ちょっと、なんで北斗がノリ気なの」

「メンバーの仕事はみんな嬉しいものでしょうよ」

「役柄は一途な女の子に恋をされる青年の役。友達も多くて老若男女問わず人気者で、でも恋愛に関しては鈍くて女の子は“運命の人”だと思ってアピールして最終的には結ばれるっていう王道恋愛もの」

「運命の人？俺が？」

「そう。ヒロインはもう決まっててAAさん！ね？ジェシーにピッタリでしょ？」

Aちゃんの名前が出て一瞬で空気が凍った気がした。マネージャーにも俺がAちゃんを好きなのはバレてるけど、彼女の過去は話していない。しかも“運命”なんてワードが入る、役だとしても俺はAちゃんと向き合えるんだろうか。

「うん、いいね。ジェシーやるからOKて伝えて」

「…へ？た、大我！？」

「ジェシーにとってもAにとっても良いものになると思うから。ま、連敗記録更新するのがオチだろうけど」

「俺はっ、俺は決めたの。Aちゃんのことまず知ろうって、だから…」

数打ちゃ当たるって告白はもうしない、結局高地以外のみんなにもあの夜と同じ宣言をして仕事を引き受けた。

ちょっとだけ大我の笑顔が見れたから少しだけど一歩前進かな。