運命なんて信じない (ページ2)

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それじゃ、とジェシーくんに背を向けて歩き出す。この一部始終を少し離れたところで見ていたマネージャーはくすりと笑って隣を歩く。

「随分Aに熱心よね。もう何回目だっけ？一途って素晴らしいわねえ」

「感心してる場合？」

「いいと思うけどなあ、ジェシーくん。面白いし、記事になったら知名度上がるよ？」

「…売名行為薦めるマネージャーってどうなのよ」

「薦めるわけじゃないけど、普通に恋人としてアリだと思わない？格好いいし優しいし、何より面白い」

「アイドルを面白いと表するのはどうかと思うけど」

「もう！さっきからノリ悪いわね！」

「私からしたらなんでそっちがノリ気なのかわからないよ。普通止めるものでしょ」

「別に成人してるんだし芸能人が恋愛しちゃいけないなんて決まりはないんだから問題ないでしょ」

「問題なくても、私は好きにはならない」

「…ちょっとくらい考えてあげればいいのに」

「なに、何か言った？」

「いいえ、別に。明日の予定だけど、」

「ただいま」

家に帰って真っ暗な部屋に向かって呟く。返事が聞こえることなんてないのに幼い頃からの癖なのだから仕方がない。

“明日も会えたら運命ってことだから”

そう笑っていたジェシーくんの言葉が頭から離れない。いつもならジェシーくんの告白も軽く受け流して終わりだったのに、今日だけはどうしても彼のことばかり考えてしまう。

「運命、ねえ…そんなものあるわけないじゃん」

たまたま点けたテレビの中でジェシーくんがキラキラしたステージの上で歌っている姿が映っていた。どれだけの人がジェシーくんの歌声に、姿に、笑顔に魅了されているのだろうか。

「私とは正反対なのに、なんで私なのかな」

スポットライトの下が似合うジェシーくんと、スポットライトに照らされる人の隣に立つのすら精一杯な私。

「運命なんて、そんなものないんだよ」

リモコンの電源ボタンを押してテレビを消す。光を失った画面には冴えない私がぽつんと写っていた。