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さっきぶりの保健室のドアをノックする。先生は不在で大我が眠っているであろうベッドに近づく。
「こーち？」
「ん、起こした？具合どうよ」
「…最悪な気分」
幾分マシになってるかと思っていたが、どうやら俺が思っていた以上に良くないらしい。蒼白かった顔が今は真っ赤。
「鞄持って来た。Aに頼もうかとも思ったけど、今の大我はさすがに嫌がるかなって」
「わかってんね。でも、ちょっと会いたかったかも」
「元気になりゃいくらでも会えるだろ。同じクラスだし」
熱が上がってきたのか若干涙目な大我は男の俺から見ても色っぽい。樹やジェシーがたまに女の子扱いしたい気持ちがわからなくもない…本人は嫌がるから絶対女の子みたいだとは言えないけど。
「なんかさ、俺ダメなんだ」
「ん？どうした？」
「俺ね、高地みたいになれないから」
「そりゃそうだ。俺は大我にはなれないもん」
「そうじゃなくて、考え方？一緒に頑張ろうって高地は言ったけど俺はそんなこと言えない。だって一緒に頑張っても１人しか幸せになれない」
ここに来る前のこと言ってるのかってすぐにわかった。“一緒に”なんて俺だって綺麗事だなって思う。それでも強がって余裕あるフリをしたかった。
俺だって負けたくないから。俺の方が先に好きになったんだからってつまんない意地。
「両方ダメなパターンもあるけどな」
「Aは、高地を選ぶと思う」
「なに、具合悪いとめちゃくちゃ弱気になるの？いつもの大我らしくないじゃん」
「…そう、だよね。俺らしくない、よね」
ごめん忘れて、と大我は目元を自分の腕で覆う。具合悪いときにこんな話するから余計にしんどくなってんじゃん。自信家に見えて実は繊細な大我。これ以上話すのは色んな意味でキツいだろうから俺は踵を返す。
ちょうど保健の先生と大我のお父さんが入って来たから軽く会釈する。
「あら、京本くんの鞄持ってきてくれたの？」
「はい。これです」
「高地くんありがとう。いやー、いい男になっちゃって」
「大我には負けますけどね」
大我のお父さんとは俺も他のやつらも顔馴染み。友達のお父さんというより歳の離れた友達というか親戚のお兄ちゃんというか、上手く表現出来ないけどみんな良くしてもらっている。
「大我帰るぞ。歩けるか？」
「うん。ごめん、わざわざ来てもらって」
「じゃあね、高地くん。またみんなと遊びにおいでね」
「あ、はい。大我、ゆっくり休めよ」
「うん…ありがと、高地」
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
